メルカリがあえて売買を「煩雑」にする意味 ユーザーが絶対に知るべき3つの仕様変更

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だがこの見解には疑問の声も上がっていた。「売上金を長期間預かっていたり、ユーザーが売上金を元にメルカリの中で繰り返し購買を行っていたりするため、(コンビニで公共料金を代理受領するような)従来の収納代行業者とは性質が違う面もある」。資金決済法に詳しい弁護士はそう話す。

こうした指摘に対し、メルカリは仕様変更や業者登録を通じ一部方針転換することで応えた形だ。「(メルカリ=収納代行事業者という見解について)さまざま議論があることは認識していた。これだけ業容が大きくなる中では、ユーザーの手間が増えてしまうとしても、できるだけ安全性の高いサービスにし、法律にのっとる形で会社としての立ち位置をクリアにすべきと判断した」(会社側)。

ユーザーが離れる懸念も

メルカリの流通総額は月間100億円を超える(写真:メルカリ)

資金決済法では前払式支払手段発行者に対し、滞留している未使用残高について「2分の1以上の額を資産保全しなければならない」と義務づけており、最寄りの供託所(法務局)に発行保証金を納めるか、銀行との保全契約、または信託会社との信託契約を結ぶ必要がある。月間100億円超の流通があるメルカリにとって、負担は小さくない。

もっとも、メルカリはこれまで、ユーザーの売上金を会社の運転資金とは別の口座で管理してきた。会社の費用として手を付けることはなく、「資金保全には万全を期している」(メルカリ・リーガルグループの城譲マネージャー)と自信を持っていたが、今回の業者登録で、この確実性をもう一段引き上げる格好だ。

資金繰りに影響がないとしても、煩雑さを敬遠しユーザーが離れてしまうおそれはある。不要品を自由に売り買いできる場として、急速に成長してきたメルカリだが、マーケットプレイスとしての安全性を高めるためには、同社の最大の武器である“手軽さ”を犠牲にしなければならない部分がどうしても出てくる。競合フリマアプリも台頭する中、トップを走り続けるには、今後も並大抵でない企業努力が必要になるだろう。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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