メルカリがあえて売買を「煩雑」にする意味 ユーザーが絶対に知るべき3つの仕様変更

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さらに関連する変更がもう1つある。売上金を現金として引き出さず、メルカリ内の買い物に使う場合、従来は売上金を直接買い物に利用できたが、仕様変更後は商品購入のためのポイント(1ポイント=1円)に交換した後、買い物に使うという“一手間”が増える。なお、ポイントに交換した売上金を再度現金化し引き出すことはできない。

売上金関連の2つの変更は、いずれもメルカリ内に売上金が滞留する期間を縮小し、資金保全上の安心・安全性を高める目的で行われる。ただ、これによりメルカリユーザーには、いくぶんかの不便も生じそうだ。

株式上場に向けた体制構築

今後、商品販売から90日を過ぎると、売上金は登録口座に自動的に振り込まれることになる。この際、振込申請金額が1万円未満の場合は210円の振込手数料が必要だ。たとえば、期間内に1000円しか売り上げがない場合、実際に手に入る現金は790円になってしまうのだ。

こうした場合は現金化せず、メルカリ内で使用するポイントに変換するのがよさそうだが、上記の通り一度ポイント化した売上金を再度現金化することはできないため、メルカリ内での買い物に用途が限られてしまう。

メルカリの山田進太郎会長兼CEOは「しかるべきときに上場する」と語っていた(撮影:今井康一)

今回、メルカリがユーザーに不便を強いてまで仕様変更に踏み切った背景には、株式上場に向けた体制構築が念頭にあるだろう。「ユーザーが増えるにつれ、最近は不適切な使われ方を指摘されることも増えた。しかるべき時点で上場し、『社会の公器』になっていく必要性を感じている」。山田進太郎・メルカリ会長兼CEOは9月に行った東洋経済の取材に対し、そう語っていた。

メルカリは今回の仕様変更と同時に、資金決済法の定める「前払式支払手段発行者」として財務局に登録する。これには主に、商品券、ギフト券、プリペイドカードなどの発行業者が登録している。メルカリは従来、この枠組みに収まっていなかった。「買い手に代わって商品購入代金を受け取るという仕組みは、資金決済法の規制対象となっていない収納代行業者と同じ立場」という見解を持っていたためだ。

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