国際帝石、カザフの巨大油田で生産開始 最大で日本の石油消費量約10年分に相当も

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縮小

国際帝石は現在29カ国で80プロジェクトを推進し、生産量と埋蔵量で国内トップの規模を有している。が、世界的には石油メジャーと大きく水を開けられており、上流専業企業の中でも中堅クラスにある。

ただ、同社は中長期ビジョンとして、2020年代前半に生産量を現状の2.5倍に当たる日量100万バレルまで拡大し、世界の上流専業企業のトップクラスへ浮上する目標を掲げている。今回のカシャガン油田生産開始は目標実現に向けた重要な一里塚となる。

さらに今後は、国際帝石自身が海外巨大案件で初のオペレーターを担っている豪州の「イクシスLNGプロジェクト」(2016年末の生産開始予定、LNG年産840万トン=原油換算日量約20万バレル)や、同じくオペレーターを担うインドネシアの「アバディLNGプロジェクト」(20年までの生産開始予定、LNG年産250万トン)などを軌道に乗せていかなければならない。

カザフ独裁政権や中国国有企業の参画に不透明感

今回のカシャガン油田開発でもリスクや課題はある。開発生産における環境規制やコスト、原油価格の動向はもとより、現大統領の長期独裁が続くカザフスタンの内政、意思決定にも不透明感があり、今後の開発認可のペースは予測しがたい。

また、同油田の8.4%の権益を保有していた石油メジャーのコノコフィリップスが撤退し、その権益を中国国有の中国石油天然気集団(CNPC)が取得することで9月上旬、合意がなされた。資源外交を強化する中国とカザフスタンは、両国を結ぶ石油パイプラインが敷設されるなど近年、関係が密接化している。今後、出資者に中国国有企業が加わることで、同油田をめぐる意思決定過程に何らかの影響が出る可能性もある。

とはいえ、原油のほぼ全量を輸入に頼る日本にとって、今回の生産開始はエネルギーの安定供給確保のうえで大きな前進といえそうだ。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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