「自分探し」を支援する、デンマークの仕組み 時に立ち止まり、学び直す選択肢が必要だ

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校内にはパーティなどのできる専用ルームが充実(写真:未来教育会議)

好奇心をもってカオスに挑む力を育てる

最後に紹介するのは、ビジネスデザインスクール「カオスパイロット」だ。1991年の創立以来、社会起業家、企業の中枢を担う人材を数多く輩出しており、国際的なビジネス誌で「世界で最も刺激的なビジネスデザインスクール」と評されるなど、注目を集める。校名の由来は、「カオスな時代をパイロット(操縦士)としてナビゲートできる人材を育てる」こと。

デンマーク・オーフス市にあるカオスパイロットの校内(写真:KAOSPILOT)

「未来に受動的に対応するのではなく、未来を能動的につくり出せる人材をどうすれば育成できるか?という1つの問いからカオスパイロットが生まれた」とクリスター校長はいう。

「当時デンマークは大変な不況で、仕事をつくり出すことが大きな社会課題だった。そこで、どんな状況下でも能動的にリーダーシップを発揮し、社会で活躍する若者を育てるために、アカデミックではない実践的な教育の場としてカオスパイロットが生まれたんです」

1学年には世界から集まった36人が在籍し、3年間を通して起業家精神やリーダーシップについて学んでいく。会社員だった人もいれば、芸術家や弁護士、アスリートもおり、生徒のバックグラウンドはさまざまだ。「誰かの背景や知識はほかの誰かの学びになる」という考えがその背景にはある。

カオスな時代をナビゲートするという意味を込めたロゴがデザインされている校内の風景(写真:KAOSPILOT)

プログラムはとにかく実践的だ。生徒たちはクライアントと共にプロジェクトを進行させながら、実践と内省を繰り返し、互いに触発しながら、“複雑な課題を成し遂げられる”リーダーへと成長していくことを目指す。

ヒエラルキーを前提としたコントロール型のリーダーシップは役に立たない。重視されるのは、知識やノウハウよりも、まず自分は何をやりたいかという意思とそれに基づいて行動する力、そして他人と共創ができ、変化を恐れないという資質。いかにして、自分、そしてチームのクリエイティビティを最大化できるか、に日々挑戦している。

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