日本の自動車産業が「EV戦争」で勝ち残る道 トヨタ連合が基盤技術の標準化で反撃

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 11月8日、電気自動車(EV)で出遅れるトヨタ自動車を中心とした企業連合が、ようやく「反撃」の動きに出始めた。EV基盤技術の標準化だ。写真は人工知能技術搭載車を紹介するトヨタ自動車のリロイ副社長。10月に東京モーターショーで撮影(2017年 ロイター/Kim Kyung Hoon)

[東京 8日 ロイター] - 電気自動車(EV)で出遅れるトヨタ自動車<7203.T>を中心とした企業連合が、ようやく「反撃」の動きに出始めた。EV基盤技術の標準化だ。部品のモジュール化が一段と進むEVは、日本のものづくり技術の優位性が失われるリスクも高まる「両刃の剣」でもある。相次ぐベンチャーなどの参入も自動車業界の勢力図を変える可能性を秘める。世界的なEVへのうねりの先にどのような未来像があるのか。各社の手探りが続きそうだ。

グループで開発・コスト削減

「未来の車を決してコモディティ(汎用品)にしたくない」――。トヨタの豊田章男社長が抱いた思いはマツダ<7261.T>との提携、そして10月にデンソー<6902.T>も加わりEVの基盤技術開発会社設立へとまず結実した。

複数企業が、軽自動車からトラックまで幅広く展開できる同じプラットフォーム(車台)、駆動モーター、電池などを開発・共有すればコストを下げられる。その上で、個性を出しにくいEVで「いかにブランドの味を出すかが挑戦だ」と豊田社長は話す。

永田理・トヨタ副社長は7日の決算会見で、この新会社で「みなで力を合わせ、コストダウンを図りながら、よりよい電動化戦略を進めたい。いろいろな会社の参画を期待したい」と呼びかけた。傘下の日野自動車<7205.T>やダイハツ工業はもとより、今のところ出資先のスバル<7270.T>、提携協議中のスズキ<7269.T>が参画に前向きだ。

「チーム・ジャパン」としてやれることを考えないと欧米・中国勢などと対抗するのは難しいと、スズキの鈴木俊宏社長も2日の決算会見で指摘。好業績をけん引したインドでEV化が「一気に進めば、足元をすくわれるのではと非常に心配」と危惧する。

独フォルクスワーゲン<VOWG_p.DE>は、すでに欧米で投入しているEV「e―ゴルフ」の受注を10月から始めた。同社の日本でのEV販売は初めて。2020年に専用車台「MEB」ベースのEVを発売予定で、25年にはグループで新車の4分の1に相当する300万台のEV販売を目指し、同年までにEV50車種を投入する計画だ。

EVで先行してきた日産自動車<7201.T>、仏ルノー<RENA.PA>、三菱自動車<7211.T>の連合も20年までにEV専用車台を開発し、モーターと電池も共有。22年までに3社で計12車種のEVを投入する方針。

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