都市農家を待ち受ける固定資産税激増の未来 地主系お金持ちも3代続けばむしり取られる

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Bさんは以前、一族の農地を使って果樹栽培に取り組み、地元自治体の品評会で入賞したほか、農業関係の資格をいろいろ取得。大型農機の操作もできる実力派の農家でした。しかし、いまは農業から離れて自分の人生設計を立て、地元の企業に勤めています

10億円も3代相続が続くと1.7億円に

地主一族が、3代続いた場合、いくら税金がかかるのか、モデルケースで試算してみましょう。所有する不動産などの相続税評価額が合計10億円として、3世代にわたって相続が続くとします。

各世代とも相続人は「配偶者と子」、あるいは「子1人」と仮定し、「配偶者の税額軽減」のみ考慮します。そうして計算すると、3代相続が続いた後には資産が1.7億円程度にまで減ってしまうのです。また、税負担が半分になったとしても、3代相続が続いたら約3.7億円と半分以下になります。

この間、経済情勢が変化したり、相続人の間でもめ事があったりすれば、1億円さえ残っていないかもしれません。大地主の一族であっても、3代相続が続くと普通の家になってしまうことは十分ありえます。

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特に、日本の場合は富の再分配を重視する傾向が強く、増え続ける社会保障費を賄うために今後、消費税を引き上げていくことになれば、富裕層に負担を求める狙いから、相続税がますます重くなるでしょう。

地主や都市農家の後継者のみなさんにとって、多くの不動産を引き継ぐゆえの心配や悩みは、深刻になる一方です。環境は急激に変化しています。「いままで何とかなったんだからこれからも大丈夫だろう」という考えは危険です。

親世代はこれまで成功体験しかなく、現状維持で不都合を感じていないことが多いので、資産を「引き継ぐ」世代が、将来について考え、相続税対策に一刻も早く着手することが求められているといえるでしょう。

江幡 吉昭 一般社団法人相続終活専門協会 代表理事

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えばた よしあき / Yoshiaki Ebata

1999年大学卒業後、住友生命保険を経て、英スタンダードチャータード銀行に入行。2009年、資産家の税務・法務・財務・資産運用の専門家集団を束ねるファミリーオフィスを設立し、主に相続・事業承継等の問題を顧客側の視点で解決。現在は、株式会社アレース・ファミリーオフィス代表取締役、アレースグループ代表。また、一般社団法人相続終活専門士協会を設立、代表理事を務める。著書に『資産防衛の新常識』(幻冬舎)など。

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