広島-東京「新幹線vs飛行機」の仁義なき戦い 航空の最終便繰り下げで「夜の競争」が激化

拡大
縮小
ANA690便は羽田空港に23時着。羽田からは首都圏各地へのリムジンバスが充実している(筆者撮影)

また、最近では羽田空港から首都圏各地へのリムジンバスが充実している点も、飛行機利用のメリットとなっている。リムジンバスは確実に着席できることから、空港からのバス利用も含めて飛行機を選ぶ人も多い。羽田空港は駐車場が充実していることから、荷物が多いときなどは車の利用が便利な飛行機を使うという人も一定数いる。

ANA690便も利用者は多く、筆者が利用した際も搭乗率は9割近くだった。定刻どおりに出発したこともあり、羽田空港には22時50分にスポットに入り、23時過ぎには到着ロビーに出ることができた。

運賃も購入時期を選べば大差ない

東京都心への到着時間ではそれほどの差がない飛行機と新幹線だが、気になるのは運賃だ。

飛行機(ANA690便)の場合は、前日まで購入可能な特定便割引運賃「特割」を使い、筆者は土曜日の便を1万5790円で購入できた。単身赴任者の利用が多い金曜日や旅行者が多い日曜日は料金が上がる場合もあるが、ほかの便に比べると割安な運賃設定となっており、平日は1万6190円で買える日が多かった。もし、1カ月以上前に予定が確定できるのであれば、事前購入型割引運賃「旅割」を使うことで、1万1000円~1万4000円程度で買うことができる。

ただし、飛行機利用の場合には、これに加えて空港までの交通費が別途必要となる。広島駅―広島空港間のバスは1340円だ。

一方、新幹線利用の場合は、自由席利用で片道1万8040円、指定席利用で1万9080円(「のぞみ」利用の場合)であるが、JR東海・西日本のエクスプレス予約「EX予約サービス」(会員登録・年会費が必要)を使うと1万7660円で、3日前まで購入の割引「EX早特」を使うと平日1万5900円、土休日1万5500円となる。

購入のタイミングにもよるが、運賃の面でも飛行機の最終便と新幹線の最終列車は互角といっていいだろう。

これまでは、広島市内により長く滞在するためには飛行機より新幹線だったが、空港の運用時間延長により、状況に応じて飛行機と新幹線の両方から選ぶことが可能になった。利用者にとっては便利になった「最終便の争い」。どちらを利用しても、19時半ごろまでは市内で広島風お好み焼きなどの広島グルメを満喫したり、仕事の会食に顔を出したりすることはできそうだ。

鳥海 高太朗 航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

とりうみ こうたろう / Kotaro Toriumi

1978年千葉県生まれ。成城大学経済学部経営学科卒。食品会社、コンサルタント、城西国際大学観光学部助手を経て現職。専門は航空会社のマーケティング戦略。利用者・専門家の双方の視点から各社メディアを通じて情報発信をしている。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT