ラッセル・クロウも批判する豪州の難民施設 閉鎖した難民問題がさらに泥沼化

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マヌスの収容施設内で窮状を訴えて集まる収容者たち。11月5日撮影

1台のスマホが照らす豪州難民施設の真実」(4月19日配信)、「トランプ劇場に踊らされ見失いがちな『本質』」(3月4日配信)、「トランプの難民排除、知られざる意外な矛盾」(2月1日配信)と、これまで3回にわたって報じてきたオーストラリア政府が設けた難民収容施設の実態。その「閉鎖」をめぐって今、にわかに世界中から厳しい視線が注がれる事態となっている。大物ハリウッド俳優までもが声を上げ始めた。

ついに「閉鎖」を迎えた施設が大混乱

難民受け入れに対して厳しい姿勢を取るオーストラリア政府は、イランやアフガニスタンなどから戦火を逃れてボートで海を渡ってきた難民申請者たちを海上で強制的に拿捕し、隣国のパプアニューギニアのマヌス島などに設置した収容施設へ収容してきた。

この実態に国際社会から人権侵害だとの批判が続出、昨年パプアニューギニアの最高裁判所が憲法違反の判断を下したことを受けて、同収容施設が先月31日、遂に閉鎖された。

その施設の「閉鎖」が今、思わぬ騒ぎに転じている。収容されていた約600人(その多くが難民認定を受ける資格を持っていると推定されている)に対して政府が取り急ぎ移動するよう指示したが、島内の代替施設周辺の治安が悪く、地元民らに襲撃されるおそれがあることなどから、移動を拒否する難民申請者が続出したのだ。

施設の一部はいまだに建設中でライフラインが通っておらず、「コンテナしかない状態」などの報告もされており、1度施設を出て移動を始めた収容者たちが再び歩いて閉鎖された施設に戻る姿が見受けられるなど、混乱が続いている。

一方、元の施設は事実上「閉鎖」されたため、水道、電気、ガスなどの供給がすべて打ち切られているほか、食事の提供もストップしている。現在も施設内にいる収容者の男性によると、困窮した収容者たちは雨水を求めて自力で何時間も土を掘るなど目を疑うような光景が繰り広げられているという。

彼は「その水は飲めるほどに清潔なのかは誰もわからないが、皆水分を求めて沸かして飲んでいた」という。それらの水を瓶に詰め、塩や砂糖などを加えて空腹をしのいでいるほか、シャワーも出なくなっているため、空から降り注ぐスコールをシャワー代わりに体を洗うなどして、なんとか生活を続けている状況だ。

次ページ精神的に疲弊し、ナイフで自らを切りつける収容者も…
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