マネーフォワードが上場後に狙っていること 話題の新興企業トップにロングインタビュー

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:当初は、「おカネとどう付き合えばよいかわからない」といった個人の悩みを解決したかったんです。将来にしたいことや、老後の過ごし方、子どもの教育といった、人生にひもづく希望や悩み、おカネに関連する課題を誰もが抱えていますが、そうした課題を解決するためには将来、自分がいくら必要なのかがわからないわけですよ。

辻庸介(つじ ようすけ)/マネーフォワード社長 CEO。京都大学農学部を卒業後、ペンシルベニア大学ウォートン校MBA取得。ソニー株式会社、マネックス証券株式会社を経て、2012年に株式会社マネーフォワード設立。新経済連盟の幹事、経済産業省FinTech検討会合の委員も務める

だからとにかくおカネを増やしたいと思ってしまう。そこで、目標値と現在の状況を可視化して、その差分を埋めるためには何をすればいいかということを、考えなくても理解できるサービスを作りたいと思ったんです。そのために、今の資産状況がわかるサービスを作ろうと考えたのが、マネーフォワードの出発点なんです。

でも5年事業をやって、まだスタート地点しかできてないんですよ。最近ようやく「しらたま」という自動貯金アプリで、おカネを増やすところに手をつけられたところです。

小林:マネーフォワードを「家計簿」としてとらえると、対象となるのはキャッシュフロー的な部分じゃないですか。一方、資産運用はBSを扱うものです。両者は似ているようでぜんぜん違いますよね。そこはどうつなげていくんですか?

:会社経営ではBS、PL、キャッシュフローのいずれも大事なように、家計においても家計簿と資産管理の両方が大事だと思うんですが、日本では家計簿が圧倒的に強くて資産管理の観点があまりないんですよ。

アメリカだとPFM(Personal Financial Management)というカテゴリがあるんですが、日本だと「家計簿」にするとわかりやすい。AppStoreでも「家計簿」として扱ったほうがASO(Apple Store Optimization)がかかりやすいんですね。そこをどうするかは議論してきましたが、「家計簿」と呼んだほうがいいという判断になりました。ただ、最近では徐々に、「自動家計簿・資産管理アプリ」とも呼ぶようにしています。

すべての人のおカネのプラットフォームになりたい

小林:PFM事業は個人向けですよね。それとは別に法人向けのMFクラウドという2つのサービスを提供しているわけですが、両者は大きく異なるものですよね?

:PFMは個人の家計を見える化して、さらには資産の状況まで見える化するサービスです。金融機関の口座やアマゾンなどのサービスと連結するだけで、おカネの動きを自動で見える化でき、その結果節約が進みます。レコーディングダイエット(日々摂取する食物とそのエネルギー量を記録するダイエット法)と同じで、まず今までもやっとしていた家計を見える化して課題を把握し、理想の家計を提案します。固定費や変動費を削減することでおカネが貯まる、というサービスですね。

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