「72時間ホンネテレビ」が示した3つの本質 地上波が失ったものがそこにはあった

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これは、「視聴率につながるリアルタイム視聴者層と、ネットテレビの視聴者層は別である可能性が高い」ということ。ただし、テレビ局はこの結果に安穏としていられません。

この3日間、私の周りにいる40・50・60代の男女各5人(計30人)に、「『72時間ホンネテレビ』を見ましたか?」と尋ねたところ、14人が「見たいのに見方がわからなくて見られなかった」、10人が「見ようと思わなかった」、6人が「見た」と言っていました。

計30人と少ないサンプル数ではありますが、「日頃ネットでニュースやゲームを楽しみ、FacebookやLINEを使っている40・50・60代の男女ですら、まだAbemaTVの使い方はわからない」という人が約半数を占めたのです。

現状は40代以上の層にはネットテレビやテレビ画面でのネットコンテンツ視聴が浸透していないだけであり、ネットコンテンツをテレビ画面で見られる機器であるAmazon Fire TVやGoogle chromecast(クロームキャスト)などの普及が今後進んだら……何か手を打たないかぎり、さらにテレビ番組の視聴率は下がってしまうでしょう。

また、「東洋経済オンライン」などのネット媒体においても、ネットテレビの存在は脅威です。実数こそ発表されていませんが、「72時間ホンネテレビ」が放送された3日間は、「各ネット媒体のページビューやユニークブラウザなどの数値が下がった」という話を聞きました。

今後は、テレビ番組、ネットコンテンツ、電子書籍などが、ますますテレビ、パソコン、スマホの画面を奪い合う争いが激化していくでしょう。今回の「72時間ホンネテレビ」やネットテレビが、その争いに名乗りを上げたのは間違いありません。

いつか5人で“サードステップ”を

最後に話を3人に戻すと、今回は「彼らへの飢餓感と期待感が好結果につながった」という側面がありましたが、この先は不透明。しかし、真摯で謙虚、挑戦的かつ柔軟な彼らなら、ライトなファン層もつかんでいくのではないでしょうか。

企業の経営判断としても、テレビマンの判断としても、今回のポジティブな結果を生かさない手はありません。年末年始あたりに再びAbemaTVで「〇時間ホンネテレビ」が見られるのでは……いや、いきなりレギュラー番組としての発表があっても驚かないのです。

さらには、NetflixやAmazonプライム・ビデオなどの動画配信サービス、もしかしたら地上波への出演が決まるかもしれません。彼らは自らの手で、そう思わせるほどの状況に持ち込んだのです。

3人にとって現在の状況は、SMAP時代の“ファーストステップ”に続く、“セカンドステップ”。コアなファンにとって「72時間ホンネテレビ」は、皮肉にも5人での再集結がないことの証明になってしまいましたが、必ずしも悲観してはいないでしょう。

セカンドステップが成功したら……いつか5人での“サードステップ”だって。3人があえて中居正広さんや木村拓哉さん、そしてジャニーズ事務所について、ことを荒げず口をつぐんだことで、その希望がつながったのも、また事実なのです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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