40代の”成功”と”失敗”を分かつもの グローバルエリート特別対談 with 城繁幸(その1)

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愛社精神とプロレス

:でもそれは多分、一部のトップ企業の話ですよね。

ムーギー:私ね、これを言うと嫌みかって言われるんですけど、トップ企業の人しか知らないもので。……炎上をいただきました。これで2ちゃんねるのスレッドが3つは立ったな(笑)。

:僕はもう少し普通の人について調べているのですが、僕が思うに、愛社精神の定義が違うのではないかと思うんですよ。日本のサラリーマンの愛社精神というのは、たぶんすごく建前的なもので、求められれば会社のために殉じるけれど、その代わり何かが保障されるに違いないという暗黙の約束がある。だからこそそれが裏切られると、JALのリストラされた50代のパイロットが、もう会社潰れてるのに記者会見を開いて、「ILO(国際労働機関)に訴えます」などと言うことになる。

だけど、中国人とかアングロサクソン系の人たちの愛社精神というのは、何ていうのかな、働く楽しさがそこにあると思うのです。自己満足というか、仕事に対する満足度というか、自分が今その仕事を選んでやっているのだから、当然、それは楽しいし、会社のためにも働く。嫌になったら転職もする。そこが違うと思うんですよ。僕がそれをいちばん感じたのは、実はプロレスを見ていたとき。

ムーギー:おっ、またプロレスネタきましたか。

:そうそう。新日本とか全日本とかノアとか、日本でメジャーと言われる団体が外国人の選手を呼ぶでしょう。WWE(World Wrestling Entertainment)を落ちたりクビになったりした選手を連れてきて、1年半ぐらい経つと日本に定着する。選手も『週刊プロレス』のインタビューとかで、「日本は本当にすばらしい国だ」とか、「俺は全日のために死ぬ覚悟ができている」とか言う。ところがその2カ月後に、WWEから声がかかったらサクッと辞めていくんです。

多分、彼らの愛社精神というのはそういうことなのだと僕は思う。契約した仕事に対してはベストを尽くすけど、それ以上に肩入れすることもない。だからすごく対等でカラッとしてる。カラッとしているがゆえに、より良いオファーがあればあっさりそこに行く。これが日本だと、身も心も捧げて貢いで、だから私を愛してね的な、愛人関係みたいな凄くウェットな世界。だから、なんだか定義が違うんだなという気がします。

ムーギー:中国人、アメリカ人といっても本当に多種多様なので、到底、一般化はできないのですが、その人に愛社精神があるかどうかは、マネジメントする側としても、誰にベットして投資して引き上げるかを選別するうえで、重要な項目なんですよ。転職するのが当たり前の環境なだけに。

そんな中で愛社精神というか、フォー・ザ・チームみたいなことをアピールしていると、「こいつはずっといて頑張ってくれるから、ちょっと引き上げてやろうか」となる。それで給料が高くなったら、社員はそれを片手にほかの会社に行って、「A社は給料を上げてくれたから、お宅ももうちょっと出してくれ」と交渉するような世界なんです。だから自分の交渉力というか、マーケットバリューを高めるための一環として、愛社精神を口にするというのはあると思いますね。

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