経済効果150兆円!?五輪がもたらす光と影 経済再興への期待の裏側で懸念も膨らむ

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株式市場も五輪に熱狂

五輪開催に沸き返る日本。「9日朝から問い合わせの電話が鳴りやまなかった」と、証券会社の広報担当者は悲鳴を上げる。日経平均株価は東京五輪決定後の3日間で564円(4%強、終値ベース)上昇した。東京五輪の焦点は、それが経済的にどういう影響を与えていくか、ということに移り始めた。

新国立競技場、水泳会場、バスケットボール会場など、臨海部を中心に五輪関連施設は20カ所整備される。東京都は20年までの7年間で直接的な経済波及効果が約3兆円になると試算した。日本の国内総生産(GDP)が500兆円規模であることを考えると、3兆円の経済効果は限定的にも見えるが、実際はどうなのか。

7年間で150兆円以上と見込んだのが大和証券だ。「道路整備など国土強靱化で55兆円、観光業で95兆円の効果が出る。特に観光はアベノミクスの成長戦略とも重なって伸びていくはず」(投資戦略部の近藤慶幸・上席課長代理)。

政府は現在年間1000万人の訪日観光客を3000万人に引き上げる計画を進めているが、同社はこうした動きが加速すると見ている。アベノミクスでいえば、五輪の経済効果は第2の矢、第3の矢を補完する役割になるという。

150兆円こそ突出しているが、「間違いなく3兆円以上にはなる」(第一生命経済研究所の永濱利廣主席エコノミスト)、「都の試算はとてつもなく小さな数字。真に受けるとがっかりする」(野村証券の山口正章エクイティ・マーケット・ストラテジスト)など、それなりの効果を期待する声は多い。

東京五輪決定に沸くのは、株式市場だけではない。

「五輪が決まったから、買うことに決めた」

三菱地所レジデンスが東京湾岸で販売しているタワーマンションには、東京開催が決まった直後、日本時間の8日早朝から問い合わせが急増した。これまで様子見を続けていたが、一転して購入を決断した客もいたという。この日のモデルルーム来場者数は前週末の2倍。販売員の数が足りず、案内なしで見学する客まで出る盛況ぶりだった。

何しろ、このマンションが建設される場所は、選手村が作られる中央区晴海の都有地から目と鼻の先。ここに住めば、大会期間中、五輪の空気を間近に感じられることは間違いない。だが、それ以上に購入検討客の背中を押しているのは、五輪開催をきっかけにして周辺のインフラ整備が一段と進むという期待感だ。

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