東京モーターショーは本当に衰退したのか 来場者や出展企業だけで語るのは寂しい話だ

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「東京でなければ見られない」というモデルがどんどん増えれば…(撮影:風間仁一郎)

トヨタ自動車の「センチュリー」や「クラウン」、軽自動車といった国内専用モデルに対する海外メディア受けもよかったと聞くが、この辺りは海外ショーで日本未導入モデルに喜ぶ日本人の気持ちと同じだ。今後「東京でなければ見られない」というモデルがどんどん増えれば、海外メディアだって黙っていられないだろう。

輸入車メーカーの世界初公開モデルが1台もなかったのは残念だった。ただ、直前に行われたフランクフルトショーで世界初公開されたコンセプトモデルの多くが、そのまま日本へ直送されてきたことは評価していい。

復活のシナリオはどう描く?

フラッグシップコンセプトカー「LS+ Concept」を世界初公開(撮影:大澤 誠)

今回、筆者はプレスデーだけでなく一般公開日にも会場に足を運んだが、一般来場者のコンセプトカーや市販予定車へのあこがれはもちろん、平置き展示されている市販車のチェック、車両解説員への熱心な質問など、日本人のクルマ熱は決して薄れていないように感じた。

日産自動車「GT-R」やホンダ「NSX」「シビックタイプR」、トヨタの「レクサスLC」、ポルシェなどのスーパースポーツモデルはもちろん、普段は乗ることのできないトラックなどの乗車体験には長い列ができていたほど。また、試乗体験や自動車ジャーナリストが専門家の視点で解説を行うガイドツアー、シンポジウム、スポンサーイベントなども盛況で、来場者それぞれがいろいろな楽しみ方をしていた。

もちろん、すべてが万歳かというとそんなことはない。ここでは多くは語るつもりはないが、会場の問題や付帯イベント、海外メーカーの誘致、一般来場者への対応など、次回に向けて改善すべき点はたくさんある。プレスデーでは海外メディアの数が減ったと指摘されていた。メディア側から停滞感が見えたのも事実。そこは主催者である日本自動車工業会も反省すべき部分だと思う。

1つ言えるのは、東京モーターショーは世界に向けた発信も大事だが、それよりも来場者が「来てよかった」「楽しかった/面白かった」と実感してもらうことこそが、復活のシナリオだと思っている。来場者数や規模では海外のモーターショーには太刀打ちはできない。顧客満足度でナンバーワンを目指してほしい。

山本 シンヤ 自動車研究家

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やまもと しんや / Shinya Yamamoto

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“わかりやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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