発達障害の子どもを正しく理解していますか 一人ひとりに合った支援が必要だ

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「とても安心しましたね。定期的にお電話をいただいて、息子の状態を伝えて、それについてこれをプラス思考に持っていくということをアドバイスいただいて。報告レポートも毎月届いて。頼りになりました。私は叱るとき、親だから頭ごなしに感情が入れてしまう。でも『あすはな先生』では感情を出さない。いつも頭が下がります。わかっているんですけど、つい体調が悪かったら頭ごなしに。そのときにはやっぱり『あすはな先生』を思い出して。『ちゃんと相手の話を聞き出して、それから何かあれば一呼吸置いて、場所を変える』など、『あすはな先生』で教えていただいたことを頭に浮かべながら行動に移しています」

子どもの支援者・理解者を増やすために

「今の1番の課題はやっぱり人ですね。問い合わせの電話に関してはひっきりなしにほぼ毎日かかってきますので、膨らむニーズにお応えできるだけの人材の確保、質の高い支援者の確保ができていない」

上木さんは、人材の課題を解消するとともに、発達障害を持つ子どもたちの「よき理解者、よき導き手」を増やしたいと、2016年に「発達障害サポーター’sスクール」を開講。

「発達障害サポーター’sスクール」で講師を務める「一般社団法人子ども・青少年育成支援協会」の理事で臨床心理士の村中直人さんはこう話します。「発達障害自体が、『障害そのものが引き起こす困難』と、『周囲との関係性で起こる困難』があるにもかかわらず、それがごっちゃになってしまっているのが1番の問題だと思っています。まずは子どもたちの支援者と呼ばれる人たちの中に、発達障害に関する知識やノウハウが、『基本OS』のように浸透するということがすごく大事。そうすると、子どもたちが何らかの形で支援者と出会ったときに、専門的な知識やノウハウを持った人、適切な対処のやり方を知っている人と出会う確率が高くなる。それがどれだけ早いタイミングで起こるかによって、その子たちのその後に非常に大きく影響すると思っているので、草の根で広げていくというのは大事かなと思っています」

2016年に開講した際は受講者が10人に満たなかったのが、取材をさせていただいた2017年3月には50人に。延べで約3000人の方が受講されています。沖縄の離島から公立小学校の教諭の方が参加されたこともあるといいます。

「このような網羅的に基礎的なことをしっかり学べる場があるようでないということで、回を重ねるごとに人が増えています。ニーズの高さを感じるとともに、全国に等しく子どもたちはいる中で皆さん本当に困られているにもかかわらず、学びたくても学ぶ場がないという実情があるんだなとすごく感じてます」と上木さん。

利便性を高く、発達障害についての情報にアクセスしやすい環境をつくれたらと、ウェブ上での講座の配信も検討しているそうです。

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