北と軍事衝突、前CIA長官が示した懸念の重み 「20~25%の確率」日本に火の粉及ぶ最悪説も

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米国のインテリジェンス・コミュニティは、CIAや米連邦捜査局(FBI)など16の機関で構成され、それらを国家情報長官府(Office of the Director of National Intelligence, DNI)が統括している。全世界で機密情報を集め、DNIが情報を集約し、そのエッセンスが毎日大統領に報告される仕組みになっている。軍事力と並んで、米国の国力の源泉を成すのが、このインテリジェンス・コミュニティの情報力だ。

政治的な主張に左右されない超党派集団

このインテリジェンス・コミュニティのなかで、海外の情報を担当するCIAは、中心的な存在といえる。そして、インテリジェンス・コミュニティの高官たちは、現職や元高官を含めて、強いつながりを保って情報や認識を共有し、政治的な主張に左右されない一種の超党派集団として機能している。

ブレナン氏自身、1980年にCIAに入り、CIAを中心にインテリジェンス・コミュニティに30年以上身を置き、最後にCIA長官に上り詰めた人物だ。

軍事衝突の可能性が「20~25%」というブレナン氏の認識は、インテリジェンス・コミュニティ内の見方を反映したものといってよく、それだけに非常に重いものだ。

拙著『乱流のホワイトハウス トランプvs.オバマ』(岩波書店)に詳述しているが、ブレナン氏は、オバマ政権が2011年にビンラディン殺害作戦を実行した際に、決定に深く関わった有能な人物だ。当時、大統領補佐官だったブレナン氏は、2011年4月29日朝、殺害作戦の実行命令を、オバマ大統領から直接受けた4人のうちの1人だ。

そして5月1日には作戦実行の一部始終を、オバマ大統領やクリントン国務長官らと共に、ホワイトハウス内の作戦室(シチュエーション・ルーム)で見つめていた。オバマ政権内では、冷静な分析とぶれない判断で知られる人物だっただけに、そのブレナン氏がオン・ザ・レコードの(オフレコではない)場で語った「20~25%」とも解釈できる軍事衝突の可能性の高さは衝撃だ。

ブレナン氏はなぜそんな数字に言及したのか。

その狙いは、翌10月19日、米NBCテレビに出演したブレナン氏の言葉から読み取れた。

ブレナン氏は、トランプ政権における軍事的なリーダーであるマティス国防長官、ケリー大統領首席補佐官、米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長らは「事態の重大さを理解している」と高く評価したうえで、「重大さを理解していない」トランプ氏が軍事的なオプションをとらないように彼らが説得し、戦争を回避すべきだ、との考えを語ったのだ。

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