誰も行かない「ひらパー」に人を呼んだ逆転術 岡田准一を「園長」に抜擢した経緯

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――崖っ縁商品2例目が森永製菓の「JACK」でした。

キャンペーンコピーは「美味(おい)しいのに、崖っぷち。次売れなかったら終売。森永製菓JACK」。ヤケクソ動画にヤケクソポスター、社内事情を暴露した「美味しいのに、崖っぷち。サイト」をWebに作りました。こんなサイト作りましたと各メディアに知らせたら、さっそくネタサイト「ねとらぼ」が面白いと記事化してくれた。いきなりメジャーなメディアじゃないのが狙い目で、制約が少なく彼ら自身も面白ければどんなものでも取り上げてくれる。それをヤフーの人がチェックする。

鹿島臨海鉄道の車内にJACKの香りを噴出する機械を置いた嗅覚広告も同じ発想です。山手線でなくていいんです。それを面白いと思ったPR記事を発火点にする。予算がないなら実現できる場所でやればいい。山手線にこだわってそこのルールに縛られ面白いものでなくなるより、ローカル線でメチャクチャやったほうが広まる。

常識に反すると、その理由を知りたくなる?

『逆境を「アイデア」に変える企画術 ~崖っぷちからV字回復するための40の公式~』(宣伝会議/288ページ)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

――河西さん流の“PRエスカレーター”に乗せたわけですね。

「もう後がないので、子猫に頼ってます」というヤケクソ動画をねとらぼが「森永が全然売れないお菓子『JACK』のやけくそすぎるキャンペーン開始 なぜか子猫の動画などを投稿する暴挙に」と紹介して人気記事になり、それがヤフーに転載され、新聞、テレビとPRエスカレーターを昇っていく。当然SNSでもたくさん拡散され、口コミで広がり、弱者を応援する行動で売り上げを増やす最終目標に届く。

JACKは全国区で認知度を上げたいから、Webを舞台に、Web流の過激さや感情を動かすナメ切った感じの内情暴露でみんなを驚かせ、応援行動につなげた。そして美味しいのになぜか売れないという、常識に反するとその理由を知りたくなるという人間心理を突いて、買ってみようという行動へ誘いました。美味しさに訴える広告は氾濫してて誰も取り合わないけど、美味しいのにビックリするくらい売れないんです!って言われると振り向いてくれる。

――逆境にある企業なり組織なりへ何かアドバイスはありますか。

やはり腹をくくる勇気を持ってほしいですね。暗闇で怖いかもしれないけれど、実は谷のすぐ向こうに新しい大地はあります。それと心の天井を外してください、ってことですかね。ルールとか前例とか上層部の意向を忖度(そんたく)してとかで一歩も踏み出さないのはもったいない。心の天井を外すだけで、アイデアはすごく伸びるんです。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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