凶悪テロに「日本の警察」は立ち向かえるのか テロ捜査の最前線と目の前に迫る「危機」

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この国会議事堂がテロリストに占拠されたらどうなるのだろうか。そんな最悪の想定を映画化したのが、作家の金城一紀氏が原案と脚本を手掛けた『SP 革命編』(2011年公開)だ。舞台はまさに首相をはじめ全閣僚、衆参の所属議員が一堂に会している開会中の国会議事堂。テロリストたちはさまざまな方法で国会内部に侵入する。

「清掃業者」に扮したテロ集団Aグループは議事堂ではなく、隣接する国会議員会館に入る。まず入り口受付の衛視をスタンガン等で制圧。入り口を施錠し高性能爆薬をセットする。グループはさらに議員会館の地下部分の電送室にも爆薬を仕掛けた。

テロ集団Bグループは「国会担当記者」に変装。国会事務局が発行するIDカード「国会記者章」を提示すると、拳銃や爆弾が詰められた鞄はチェックされることなく、すんなりと議事堂内に入ることができた。

テロ集団Cグループは「国会見学者」を装い国会議事堂に侵入する。目視とゲートによる荷物チェックがあるため武器は携行していない。だがCグループは、Aグループが車両で運搬していた武器を受け取ることになっている。これは、Aグループのいる議員会館と国会議事堂が地下通路でつながっていることで可能になる。こうして、Cグループの自衛隊出身のテロリストが、国会の見学が終わった地点で案内役の衛視を格闘技で制圧、無力化し、ほかのメンバーとともに見学コースを外れて本会議場に向かった。

現実として起こりかねない

映画では、警視庁警護課所属のSPの一部も犯行に加担しているという設定で、テロリストとともに衛視を次々と拘束していく。そして、A・B・Cのテロ集団は本会議が開会すると一斉に突入。爆弾を議場内の議員数名に取り付けた。手始めとばかり首謀者が手元のリモコンスイッチを押すと、国会議員会館地下に仕掛けられた爆薬が起動し爆発。轟音が響き渡る。首相以下、すべての国会議員は凍り付く。首謀者は登壇し、議場内を中継していたテレビカメラに向かって自らの要求を述べ始めた。

「この議場内にいる諸君に告ぐ。いまこの時をもって諸君は我々の支配下に入った——」。フィクションとはいえ、現実として起こりかねない設定だったと、ある警察関係者は言う。

「映画でも触れていたが、国会内の衛視は武器の携行が認められていない。まさか警視庁SPが寝返ることはないだろうが、もしもと考えたらぞっとするストーリーだ」。この映画が公開されて6年が経過しているが、いまだに国会内の警備にあたる衛視に武器の携行は認められていない。

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