小林製薬「小さな池の大きな魚」戦略の舞台裏 ニッチ市場で高シェア商品を連発できるワケ

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④わかりやすい広告:わかりやすい広告とは何か、を突き詰めていくと、顧客の問題に対しこれを使えばこのように解決します、ということを訴える形に落ち着きました。まず「企業紹介(あ、小林製薬!)」→「問題(こういうときって困りますよね)」→「紹介(だったら〇〇がいいですよ)」→「解決(△△成分が効いていきます)」→「ハッピーエンド(よかった、小林製薬の〇〇)」というストーリーです。問題提起解決型のCMが最も印象に残る、ということです。

そして小林製薬で最も力を入れているのは、とにもかくにも、いかにいいアイデアを出すか、ということに尽きます。

「あったらいいな開発」で年間約2万8000件の提案

そのための全社挙げての運動が「あったらいいな開発」です。全社員が毎月1件以上のアイデアを社内イントラネットを利用して提案します(社員提案制度)。年間で約2万8000件の提案が集まります。またこれとは別に、開発担当者がこれはというものを考えて具体化し、毎月1回、社長に対して新製品アイデアのプレゼンを行います(アイデアプレゼン)。社長は、年間約250件のプレゼンを受けることになる、というから大仕事です。

しかし、大変なのはここからです。社長による陣頭指揮の下、月に1回「開発参与委員会」で現場の担当者が現物を提示しながら、さらに具体的なプレゼンを行います。関係者全員が議論することでその場で結論を出し、スピード感をもって開発を進める体制が出来上がっています。ただプレゼンも詳細にわたり、数もそこそこあることから、この委員会は2日にわたります。講演をされていた小林副会長も「さすがにこれは疲れます」と本音を漏らしていました。しかし会社の将来を占う大事な会議です。会社幹部も開発担当者も、毎月、必死で取り組んでいます。

こうした日常的なアイデア提案とは別に、年に1度、グループ全社挙げての「全社員アイデア大会」も実施されます。全社員3000人が、創立記念日である8月22日に各職場で一斉に新製品アイデア会議を開催します。今年は2581のアイデアが出され、グループ・課で代表アイデアの選考が行われました。その後、絞り込まれた272のアイデアについて、各事業部で最終候補を選び出します。選び抜かれた19のアイデアで決勝大会が行われ、優秀賞が決定します。優勝したアイデアは、表彰とともにすぐに製品化に向けて開発がスタートします。スピードの重視は、ここでも徹底しています。

製品開発は社長が陣頭指揮、と書きましたが、会社幹部と一般社員の距離が近いのも同社の特長です。優秀提案者や提案数が多かった者などを対象に、年1回、トップをはじめ役員方と自由に話ができる夕食会の開催も、そうした流れの一環です。

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