「アイボ」はクラウドとAIで生まれ変わった 異業種コラボで応用ジャンルの拡大も

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もっとも、それで終わりというわけではない。なぜなら、今回のaiboは常時インターネットサービスに接続された状態で動き、本体内のハードウエアシステム内にプログラムされたAIだけでなく、クラウド内にサービスとして実装されたAIサービスとも協調動作するように設計されているからだ。

個性を持った子に育っていく「aibo」(筆者撮影)

先代AIBOの場合は、AIBO内部にAIエンジンが閉じており、またAIプログラムも初歩的なものだったため、各AIBOには個性が生まれにくかったが、新生aiboはクラウドの海の中でより多くの経験値を蓄積し、行動のバリエーションも広がるようプログラムされている。

川西氏によると「aiboが実際に、オーナーやオーナー家族、友人に対してどのように反応するようになっていくのか。それぞれの環境や接し方(背中や頭にあるセンサーなどから、周囲の人間の接し方まで学習している)によって変化するため、aiboがどう育つかはわれわれも予測できない面があります」と話す。

それだけ個性のある子に育っていくということだが、オーナー家族や友人とaiboの間で育まれた個々のaiboの個性を決めるデータは、クラウドの中に蓄積されていくことになる。言い換えれば“aiboの魂はクラウドに宿る”ということだ。

それを象徴するのがiOSとAndroid向けに提供される「My aibo」というアプリ。「関節部が多いロボットなので、屋外でaiboと遊ぶのはやめてください」という川西氏だが、このアプリを使うとスマホを通じ、クラウドの中にある“僕のaibo”と遊べるという仕掛け。当然、“僕のaibo”だけに自宅のaiboと同じ学習・育成データを持ち、同じように振る舞う。

愛玩ロボットとしての個性はクラウドに

実体としてのaiboという製品は、ERS-1000という物理的な製品だが、愛玩ロボットを通じて育成されるバーチャルなペットとしてのaiboはクラウドにいる。どちらが主体か?という議論は無粋だろうが、物理的な身体にこだわらないのであれば「補修ができなくなった場合でも、新しいaiboを入手していただければ、それまで育ててきたaiboのデータをダウンロードできます」と川西氏は話す。

士郎正宗原作の攻殻機動隊を想起させるテーマだが、クラウドの中にaiboの魂が宿るのならば「My aibo」アプリを将来、aiboオーナー予備軍に使ってもらいバーチャルaiboと遊んでもらえばいいのにな……。話が脱線しそうになったが、いずれにしろこのスタイルならば“愛玩ロボットとの別れ”をどう考えるか、といった心配も(コスト面でメンテを維持できないといったオーナーは出てくるかもしれないが)技術的には問題なさそうだ。

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