「子どもの誕生日会」に浪費する親たちの心理 マジシャンからDJ、チアリーダーまで用意

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ミネソタ大学家族社会学のウィリアム・ドハーティ教授が、『Birthdays Without Pressures(プレッシャーのない誕生日)』と呼ばれる同大と地域の共同プロジェクトを始めたのはこうした理由からだ。ドハーティ教授の目的は、誕生日パーティを「さらに大きく、格好よく、完璧に」しなくてならないというプレッシャーを感じている親に対して、冷静になることを促し、シンプルだが意義のあるパーティを開くための代替案を提供することだ。

同教授は、誕生日パーティは開かなければならないものだと親たちは感じているが、大規模で手の込んだパーティは子どもたちが絶望感やねたみ、ストレスといった感情を抱くきっかけになりうる、と指摘する。

「また、子どもたちは自分が必要なものではなく、自分が求めるものを得る権利が与えられていると誤解するようにもなる。長期的に見ると、より多くのものを求める意識は、物質主義的な価値観を形成することになる」

1人だけ招待したお泊まり誕生日会

こうした中、同教授は豪華なパーティの代替案を考えるうえで、親が自らに次の質問を問うよう勧めている。「子どものパーティであなたが最も大切にしたいことは何か」。大事なのは世間の基準や目ではなく、子どもを含めた家族が大事にしている価値観であり、それに忠実になればいいのだ。

ロンドン在住の2児の母、スーザン・ヘンプソールさんも、かつて豪華な誕生日パーティを開いていた1人。かつて香港に住んでいた頃は、子どもたちのパーティのために毎回1000ドル以上使っていたという。同じクラスの子ども約30人とその親たちを招待しなければならず、会場費や食事代などの負担が重かったからだ。

が、今年ロンドンに引っ越した後、ヘンプソールさんは10歳の娘と話し合ってシンプルなパーティを開くことにした。今年の誕生日では、娘は友人1人を「お泊まり会」に招待することを選んだという。ドハーティ教授が指摘するように、最後は家族の価値観に行き着いた、とヘンプソールさんは言う。「社会的なプレッシャーはもう感じないし、私は自分のしたいようにしている」。

蝶々がいっぱい飛んでいる部屋だろうが、自宅の裏庭でやるアウトドアパーティだろうが、パーティにかかる費用に関係なく、親たちはすべての子どもに本人が特別であると感じてもらおうとしているのだ。子どものパーティにおカネを使うことは必ずしも悪いことではない。ただ、それが文化的な基準になることは、子どものためにもならないだろう。

アイネズ・モーバネ・ジョーンズ ライター/編集者(在シアトル)

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Inez Maubane Jones

アメリカ・ワシントン州シアトル在住。子ども向けの書籍「The Content」シリーズを手掛ける傍ら、自身のブログにて教育トレンドや子育て、社会問題などについて執筆している。

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