「音声検索なんて恥ずかしい」と思う人の盲点 日本はスマートスピーカーで出遅れている

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今回のスマートスピーカーの登場が、指先操作から音声操作への「ボイスシフト」のきっかけになりうるとしたら、日本企業の経営者やビジネスパーソンは、音声検索は恥ずかしいとか言っている場合ではなく、今すぐこの市場の未来を予測するために音声検索の世界を実体験しなければいけないはずです。

特に、今回のスマートスピーカーにおいて話が複雑なのは、スマートフォンを使いこなしている人であればあるほど、文字入力やタッチ操作による従来型の操作に慣れているため、音声検索について否定的な印象を持ってしまうケースが多い点です。

筆者の家庭でも、この1カ月LINEのWAVEとGoogle Home Miniを購入し、いろいろと実験をしてみていますが、自分のスマホを持っている妻は、当然ながらスマートスピーカーをオモチャ扱いしてすぐに飽きてしまうのに対し、自分のスマホを持っていない息子たちは、すぐに音楽再生や天気予報、アラームの機能を使いこなすようになりました。

ある意味、スマートスピーカーはスマートフォンを使いこなせていない人や、スマートフォンを使いにくいシーンでこそ、必需品になる可能性を秘めているわけです。

多くの日本企業や日本人にとって深刻なこととは?

スマートフォンに慣れている人ほど、スマートスピーカーのありがたみがわからないという意味では、典型的なイノベーションのジレンマという構造といえるでしょう。

さらに、多くの日本企業や日本人にとって深刻なのは、Amazon Echoのようなスマートスピーカーはすでに米国では3年前の2014年末から発売され、累計で世界3000万台以上が出荷されているといわれているのに、それを実際に体験している日本人がまだほとんどいないということです。

日本企業の開発者も、自分自身が音声検索による新しいイノベーションを体感できていない以上、当然ながらこうした新しいイノベーションを組み合わせた商品やサービスの開発もまた出遅れてしまうことになります。

つまり、スマートスピーカーや音声検索の分野では、日本は製品のみならず市場として3年の遅れを背負ってスタートすることになってしまっているわけです。

インターネットの黎明期、ネットの世界はドッグイヤーともいわれ、ネットでの1年の遅れは従来の産業の7年に等しいとよくいわれていましたが、スマートスピーカーの分野では、ある意味20年に相当する遅れを背負ってしまったことになります。

スマートスピーカーや音声検索を「恥ずかしい」とか笑い話にしているヒマがあったら、今すぐスマートスピーカーを取り寄せて、すぐそこにある未来を体感してみたほうが、ビジネスパーソンにとっては有益でしょう。今この瞬間のスマートスピーカーの機能ではなく、これが将来実現できることが想像されるのです。

徳力 基彦 noteプロデューサー、ブロガー

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とくりき もとひこ / Motohiko Tokuriki

NTTやIT系コンサルティングファーム等を経て、アジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。代表取締役社長や取締役CMOを歴任し、現在はアンバサダープログラムのアンバサダーとして、ソーシャルメディアの企業活用についての啓発活動を担当。note株式会社では、noteプロデューサーとして、ビジネスパーソンや企業におけるブログやソーシャルメディアの活用についてのサポートを行っている。
個人でも、日経MJやYahooニュース!個人のコラム連載等、幅広い活動を行っており、著書に「顧客視点の企業戦略」、「アルファブロガー」等がある。

 

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