AIスピーカーに透ける「ポストスマホ」の潮流 グーグルはなぜハードウエアを販売するのか

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これは世界中のあらゆる分野でこれから起こることだ。いまの自動車はハンドルがついているのが当たり前だが、10年後にはその常識は変わっているはずだ。AIが進化したことによって、「そもそもハンドルは何のために必要なのか」など、ハードのあり方を根底から考え直さなくてはいけない段階に来ている。

「"胴元"が儲かる世界は変わらない」

――グーグルはこのようなAIを導入したハードを自社で作ろうとしているのでしょうか、それともハードメーカーとの提携戦略を進めていくのでしょうか?

LINEも10月5日からAIスピーカー「クローバ・ウェーブ」の販売を開始している(撮影:大澤 誠)

スマートフォンにおけるアップルのiOSの戦略と、アンドロイドの戦略のハイブリッドを狙っているのではないかと考えている。

アップルはiOSを自社で独占してオープン化しないことで、スマホ端末というハードで大きく儲けることができている。一方、他社にもオープンにしているアンドロイドは、世界でいちばん多く普及しているとはいえ、グーグルはハードでは儲けることができていない。

今回のAIを導入したハードについては、グーグルは翻訳機能のついたイヤホンのように自社で徹底的に作り込んだハードで収益を狙いつつ、他社にもオープンにするというハイブリッド型となると見ている。

――その場合、日本メーカーにも商機はあるのでしょうか?

あるとは思うが、プラットフォームという「胴元」が儲かる世界であることは変わらない。AIプラットフォームを握らないメーカーが活路を見いだしていくのは簡単ではないだろう。

1つ可能性があるのは、ローカルなデータを活用した差別化だ。AIは「ソフトウエア」と「データ」の集合体。グーグルやアマゾンほどデータを持っている会社はないとはいえ、日本語や日本の写真といったローカルなデータや、専門領域のニッチなデータを活用できれば差別化につながるだろう。

――「ポストスマホ」という点では、音声認識という入力インターフェースも注目度がますます高まっていると感じます。

コンピュータとともに、キーボードというインターフェースが普及した。しかし、これはある程度リテラシーのある人しか使えないインターフェースでもあった。

その後、スマホで画期的なタッチインターフェースが出てきて、世界中で利用者数が急速に拡大した。音声認識は、このような「インターフェースの民主化」をさらに進めていくことになるだろう。

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