アップル再起動&電子部品サバイバル スマホ時代を開拓したアップルの再起は?

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成長鈍化は数字にも表れ始めている。13年1~3月期は売上高こそ前年同期比11.2%増えたものの、営業利益は同18.3%下落。続く4~6月期は売上高が同0.8%増にとどまったうえ、営業益は同20.4%減と2四半期連続で減益となった。

売り上げ成長の鈍化は新興国での苦戦を如実に反映している。4~6月期の米国と日本は共に前年同期比で増収となったが、香港と台湾を含めた「グレーターチャイナ」の売上高は同13.8%減少した。

驚異的な高収益にも陰りが見える。4~6月期の粗利率は36.8%と前年同期の42.8%から低下した。アイフォーン、アイパッドの販売台数は増えているものの、採算の低いミニなどの販売比率が増えていることに起因するとみられる。

一方、部品産業も大きな変化の時を迎えている。

気を吐く電子部品メーカー

パナソニックやソニー、シャープといった日本を代表する電機メーカーが失速する中、電子部品メーカーが気を吐いている。売上高上位10社の10年間の純益合計を比較すると、電機は約1兆5000億円の損失となったのに対し、電子部品は約2兆9000億円を稼いだ。

2012年度末時点の時価総額で比べても、売上高約1700億円のキーエンスが同7兆円前後のソニーやパナソニックを上回る。10年間の時価総額増加率に至っては、上位20位中19位までが電子部品関連だ。隣り合う業界で、なぜこれほどの差が開いたのか。

「10年ほど前まで日本の電機は、共に研究開発する同志だった。ところが機能の進化が部品メーカーに一任され、セットメーカーは単なる”組み立て屋”になってしまった」。スマホ向けに強いある電子部品メーカーの幹部はこう振り返る。

テレビやテレビ用パネルがよい例だ。外部調達比率の高いシャープなどは、需給バランスの崩壊で大赤字に陥った。一方で、日東電工をはじめとするパネル用部材や部品のメーカーは堅実に稼いでいる。

セットを担当する電機以外の業界に主要なノウハウが蓄積されたのだ。電子部品メーカーは技術力をスマホやタブレットなど新市場向けに振り向け、テレビの価格破壊の難を逃れた。

電機メーカーの中にも、電子部品を「次の柱」として見直す動きがある。テレビで苦戦したパナソニックは4月、車載関連製品と電子部品の新事業会社を立ち上げた。スマホ向けコネクターや放熱シートでは、パナソニックはトップシェア。リチウムイオン電池でも3位と踏ん張る。赤字を垂れ流すテレビ事業の陰で、部品事業はしっかりと稼いでいる。

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