共働き夫婦が陥りやすい「保険見直し」のワナ 妻の収入増は要注意!?夫死亡で「年金ゼロ」も

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遺族厚生年金は、亡くなった方の厚生年金加入歴に応じて変わります。B子さんの場合、遺族厚生年金は、約43万円です。厚生年金では、被保険者死亡時に厚生年金加入期間が300カ月(25年)に満たない場合、短期要件といって割り増しで遺族厚生年金が計算されるという特典があります。

仮に、当時30歳のB子さんが未亡人になりその後90歳まで生きるとすれば、受け取れる遺族厚生年金は2580万円にもなります。このほか、65歳になると妻自身の老齢基礎年金が満額であれば約78万円程度終身で受け取れます(78万円×25年=1950万円)。つまり、遺族年金だけを考えると5400万円(1800万+1020万+2580万)、老齢年金(1950万円)も加味すれば、7350万円以上ものおカネが、国からの保険で準備できているわけです。

長い時間軸での収支でなく、「単年」で考える

前述した四角形の高さは、「遺族が必要な生活費」と「国の保険」との差分と考えます(国の保険のほか、会社からの遺族への給付がある場合は、それも加味します)。仮に夫死亡後の遺族の生活費が終身で1億円だとすれば、国からの遺族年金保障5400万円との差分である4600万円が民間保険の目安とする考え方もあります。しかし、国の保険は一時金ではもらえず年金として分割でしか受け取りができませんから、何十年もの長い時間軸での収支ではなく「単年」を切り出して考えるほうが理にかなっています。

では、早速単年で考えてみましょう。もし、子どもがゼロ歳の時点で夫が亡くなると、国からの保険は年間約143万円です(遺族基礎年金約100万円と、遺族厚生年金約43万円)。この143万円で万が一の生活にどれほど不足するのか、またその不足は何年続くのか、これが契約当時に想定される四角形の高さとなります。

ここまでAさんご夫妻に説明したところ、Aさん夫妻は契約した当時、詳しい国の保険についてはまったく説明を受けず、どちらかというと一般論的な話で「このくらいの保険が必要でしょう」と勧められた印象が強いとのことでした。「改めて考えてみると、必要以上に大きめの保険に入っていた気がする」と、すでに8年分、これまでに支払った保険料の額を考え残念そうでした。

当時は、子どもをもう1人欲しいと不妊治療を継続するつもりだったというのも事情にあるようです。また、妻は育休中でしたが、2人目の出産も想定していたため、仕事を継続することは積極的に考えていませんでした。しかし、子どもは残念ながら授からず、今は3人家族としての将来設計を考えています。前出のように、B子さんも現在は共働きです。

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