CGアニメ界の巨匠が語る"ハーロック"像 荒牧伸志監督に聞く

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実写とCGの狭間

――荒牧監督がCGに魅せられる理由は?

基本的には、何も無いところから、CGですべての要素のものを一から作っていくわけですから、想像したものが何でも作れるということ。それからもうひとつ最後のレンダリングという作業がすごく面白いわけです。顔の表情や質感、ライティングといった画面の構成要素のデータをすべて組み合わせて、最終的にコンピューターでまとめる作業のことなんですが、パーツのひとつひとつは全部チェックしていて、最終的なものは想像しているはずなのに、一つの画面になった時には、なぜか思いもよらないものがポンと出てくる。期待した以上のものが出てきた瞬間は最高に気持ちがいい。それまでひとつずづ細かい作業を続けてきて、ずっと我慢していたものが、最後に爆発するような感覚というんですかね。そういった驚きや喜びというものは、何物にも替え難い。

――今後、実写に挑戦したい気持ちは?

たとえば今、『パシフィック・リム』といったハリウッドの超大作が公開されていますが、ああいったものは人間が出てくるところ以外は、おそらく7割ぐらいはCGですよ。極端な言い方になりますが、あれは完全にCG映画。そこに人間がはめ込まれているだけです。たとえば『アバター』だって、実は人間が出てくるところはそれほどない。それを何と呼ぶかということですよね。役者さんが出ていれば、実写ということになってしまう。その辺の境目はどんどんあいまいになってきています。だから僕は、基本的にはフルCGを作りつつも、そういった可能性も探ってみたいと思っています。

CGに対して、拒否反応とは言わないまでも、構えて観てしまう方は多いと思います。でもそれを何とかこちらに振り向かせるような作品にしてやろう。ここまでやれば、みんなも「いいね」と言ってくれるだろうと。そういった意気込みで取り組んでいます。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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