それでも日本株は「年内急落」の可能性がある 2018年は日経平均2万3000円も見えてきた

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ただし、最近の国内株式市況の「相場付き」には、怪しさも漂っている。

④ 日経平均の上昇が先行しすぎている。それは、NT倍率(日経平均÷TOPIX=東証株価指数)の上昇傾向に表れている。海外投機筋の日経平均先物買いがかさんでいることが背景にあると推察する。

⑤ 海外投機筋の先物買いは、その前の先物売りの買い戻しの様相が濃い。そもそも投機筋が先物を売ったのは、「森友・加計問題」で内閣支持率が低下したことが、安倍政権の崩壊につながるとの懸念と、北朝鮮情勢の不安があったためだと考える。ところが衆議院解散後は、与党の優勢が伝えられたうえ、北朝鮮がおとなしいため、先物を買い戻したのだろう。こうした先物買いは、買い戻しが一巡してしまえば、終わってしまう。あるいは、一部新規の先物買いもあるだろうが、それも投機的性質からは、ずっと買い上げていくわけでもない。

日経平均2万2000円には「お化粧」が入っている

⑥一方で、TOPIXの相対的な上昇の鈍さ(とは言っても、先週は、先々週までに比べれば劣後の度合いはかなり縮小した)をみると、長期的な投資家の現物株買いが、個々の企業収益の実態を踏まえて、しっかり入っているという感が薄い。とりわけ、東証マザーズ指数の頭の重さ(先週末は上振れしたものの)をみると、本来成長性の高い新興市場株が適正に評価されておらず、日経平均の上昇が日本企業全般の収益改善を口実にしている割には、個別にそうした動きを感じにくい。

⑦今年初からの日経平均とマザーズ指数のグラフを重ねると、ずっと並行的に動いてきたが、述べたように、足元は両者の乖離が大きい。そのグラフから、マザーズ指数の先週末の位置に符合する日経平均の水準を読むと、2万円割れ(1万9800円程度)だ。だからと言って「日経平均株価が今すぐ2万円を割れるべき」とは考えないが、2万2000円水準の日経平均には、かなり「お化粧」が入っていると解釈した方がよいだろう。

⑧業種別でみても、たとえば先週の業種別株価指数の上昇率トップは、銀行だった。出遅れ株のキャッチアップだと前向きに評価する声もあるが、銀行株の上昇要因として、米国の金利上昇が挙げられている。確かに米国の銀行については、貸出金利も上昇し、融資採算が改善すると期待できるため、銀行株の上昇はうなずける。あるいは、百歩譲って日本のメガバンクについては、米国でも業務を行なっているため、無理やり株価上昇につなげられなくはない(とは言っても、国内と海外の利益額を比べれば、かなり無理のある説明だ)。それでも地銀を含め銀行株が全体相場を押し上げるような展開は危うい。

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