M&Aで中小食品救う「異色ベンチャー」の野望 地方メーカー次々買収、事業承継の受け皿に

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グループには製造会社だけでなく食品卸もあるため、製販一体の体制が取れる。

オーブンはグループの食品卸の紹介で、自社商品を生協へ販売することに成功。その一方、埼玉でピーナツ加工品を扱うグループ企業が中国・九州エリアで販売を開始する際には、自らのネットワークを生かして販路開拓を手伝った。

2018年以降は年6件近い買収を目指す

ヨシムラ・フード・HDの創業者兼CEO 吉村元久(撮影:今 祥雄)

ヨシムラ・フード・HDの当面の目標は売上高1000億円だ。柱はやはりM&A。「ニッチだが光る製品や技術を持つ中小企業はまだまだある」(吉村CEO)。2018年以降は年間6件近い買収実現を目指すという。自動車部品や電機など、食品以外の分野への進出も否定しない。

既存の傘下企業にとって、国内は人口減少により食品市場の長期的な拡大が望みづらい。今後は日本酒などの海外販売を拡大するべく、東南アジアの食品卸や小売企業との提携をもくろむ。

課題は経営人材の確保だ。買収によって企業が増えれば増えるほど、PMIを担う人材が必要になる。地域ごと、あるいは商品の温度帯ごとにグループ分けし、それぞれの統括企業を作る構想もある。買収した企業の優秀な人材を育て上げるだけでなく、新卒採用の開始も検討しているという。

中小企業の受け皿になるという異色ベンチャーの挑戦が続く。

中山 一貴 東洋経済 記者

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なかやま かずき / Kazuki Nakayama

趣味はTwitter(@overk0823)。1991年生まれ。東京外国語大学中国語専攻卒。在学中に北京師範大学文学部へ留学。2015年、東洋経済新報社に入社。食品・小売り業界の担当記者や『会社四季報 業界地図』編集長、『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報』編集部、「会社四季報オンライン」編集部、『米国会社四季報』編集長などを経て2023年10月から東洋経済編集部(マーケティング担当、編集者)。「財新・東洋経済スタジオ」スタッフを兼任。

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