ゼネコン、過労死ライン超え黙認の重い責任 19年度、「時間外1200時間未満」を目指すが…

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こうした大手の動きに対して、中小企業や下請け業者は「土曜日を休みにしても現場の賃金水準を維持すれば、労務費が1.2倍にハネ上がる。元請けは費用を負担したがらないだろう」(都内の鉄筋業者)と憤る。

躯体工事系の業界団体幹部も「作業員の多くは日給制で、週休2日制になれば手取りが減る。(土曜日も稼働する)別の現場に応援に行くだけだ」と冷ややかだ。

関与を強める厚労省

大手と中小・下請けで温度差があるのはカネだけでなく、そもそも働き方が異なるという側面もある。

東京労働局によれば、昨年12月から今年7月にかけて新国立競技場の建設にかかわった762業者のうち、過労死ライン超えの労働者がいた事業者の割合は施工管理を行う元請けと1次下請けでは27%に達したが、2次下請け以下の中小企業では1%しかなかった。

下請け企業の現場作業員は定時で終わることが多い一方、施工管理を担うゼネコンはその日の工事終了後も事務作業に追われ、労働時間が長引くためだ。

厚労省も建設業への関与を強めている。2016年度には全国の労働基準監督署が建設業の2592事業場に対して重点監督を実施し、うち半数以上に是正勧告書を送付するなど、労働環境改善に向けた取り締まりを強化している。

「猶予期間は与えた。今回はきちんと対応していただく」(労働基準局労働条件政策課の関口洸哉氏)

日建連は内外の意見を踏まえ、今年度中に行動計画を正式決定する予定だ。長時間労働に社会の注目が集まる中、もう改革の先延ばしは許されない。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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