第3次アパマンブームは早くも終わりなのか 地銀のアパマンローンの急失速が示すこと

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第2次ブームは、2000年代初頭である。J-REITの登場で大口投資家が登場し、不動産価格が持ち直したことから、銀行は再びアパマンローンを活発化させた。物件収益の範囲で返済すればいいというノンリコース型融資も登場した。なかには、北海道の遠軽信金のように、貸出残高全体の55%がアパートローンという"専業者"も登場した 。

このブームはリーマンショックを機に終了した。この時は、金利が低めだったことから、アパートローンの行き詰まりは前回ほどではなかったものの、不動産デベロッパーの相次ぐ倒産で銀行は不動産関連融資を一斉に手控えた。

そこから復活して迎えた第3次アパマンブームが今回である。後押ししたのは、やはり、超低金利を背景とした銀行の積極融資だ。

今回は、ビッグデータの活用やクラウドファンディングなどのフィンテックの台頭が特徴だ。例えば、アパートローンを注力分野の一つに挙げる千葉銀行は「賃貸王」「アパ助くん」 という独自の審査システムを開発し、昨年度1年間でアパマンローンを14%増やした。デフォルト率は同行の貸出全体の平均よりもはるかに低い模様だ。

前回のブームと異なる「救い」

そんな中、アパマン融資の増加ペースが鈍化し始めたことは、これまでのブーム終焉のトラウマを彷彿とさせる。

しかし、今回のブームは、前回までのブームと異なる救いもある。まず、頭金の割合が高いことと極端に金利が低いことである。バブル末期の頃は、銀行は物件価格の上昇を前提に融資していたため、頭金ゼロというフルローンもしばしばみられた。これに対し現在は、フルローンもあるものの、投資物件の頭金は2割程度が主流である。

これなら、現在の平均4.3%程度(東京23区)の賃貸利回りを前提とすれば、以下の概算の通り、ある程度の経年変化には耐えられそうだ。

たとえば、一般的な30年ローンの折り返し時点として、新築時から15年後の収支を考えてみたい。賃料は新築から10年目までで年1%ずつ、10〜20年目までは年0.5%程度ずつ下落し、その後は落ち着きはじめるとされる。15年目には賃料が累積で13%程度下落している可能性があるが、それでも利回りは約3.7%残る。また、空室率は15年では8.5%程度まで上昇するとされる(金融庁資料)ので、結果3.4%の利回りが残る。

借り入れ金利は1~2.5%程度だ。当初の借入額が物件価格の8割で、その後、約定返済で5割まで減少しているとすれば、利払い負担は物件価格に対し0.5~1.25%程度(1.0〜2.5%x5割)となる。これらを差し引いた後の利回りは2.1〜2.9%程度となる。さらにここから管理費や修繕費などが引かれるが、ほぼゼロの定期預金金利よりはマシだ。郊外の物件ならもっと利回りは高い。

しかも、借入金額が相続財産から差し引かれるので、相続税を圧縮できる。現在、日本の高齢者の1割近い人々が自宅以外の賃貸用不動産を保有しているが、ウラにはこうした背景がある(内閣府調査) 。

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