常識外れの「よなよなエール」が独走するワケ クラフトビールの旗手が挑む販売と生産の壁

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同じく1996年から「常陸野ネストビール」を製造販売する木内酒造(茨城県・那珂市)は50カ国に輸出し、海外販売比率は約5割に達する。国内でもキリンビールの販路を活用する。協同商事(埼玉県・川越市)も「コエドビール」を12カ国に輸出している。

ヤッホーを筆頭にかつての地ビールメーカーの活躍が目立つのは、ビール業界は製造・販売量が物をいう装置産業にもかかわらず「国内で売り先を確保し続けるのが難しい」(酒文化研究所の山田聡昭氏)という構造的な問題があるからだ。

300社超が参入した地ビールブーム

1990年代後半の地ビールブームは、1994年の酒税法の改正で、ビールの最低製造量が2000キロリットル(350ミリリットル換算で約570万本)以上から60キロリットル(同約17万本)以上まで引き下げられたことをきっかけに起きた。

事業の多角化を図った日本酒の酒蔵や、町おこしを目的に自治体との共同出資で設立されたメーカーなどが参入。地ビール情報を掲載するWebサイト「ビアクルーズ」の調査によれば、その数は300社超に達した。

だが、製造設備の規模が小さく製造ノウハウが不十分だったため、高い価格の割に「品質の悪いメーカーが多く、リピート率は低かった」(日本地ビール協会の山本祐輔理事長)。ブームは数年で終焉を迎え、200社以下に淘汰された。

地ビールで著名だった銀河高原ビールは、1996年に岩手県沢内村(現在の西和賀町)の町おこしを目的に、注文住宅大手の東日本ハウス(現在の日本ハウスホールディングス)が設立した。

ただ、過剰な設備投資が重荷となり、工場閉鎖や法人清算など、2度にわたって事業再編に追い込まれている。最近は黒字を計上していたが、この10月末にヤッホーによって買収される予定だ。

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