「総裁選ごっこ」に終わり「明日なき自民党」に転落する可能性

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「総裁選ごっこ」に終わり「明日なき自民党」に転落する可能性

塩田潮

 9月11日、小泉元首相はパーティーで「誰がなれば、民主党といい勝負になるかだ」とスピーチしたという。
 次期総選挙が天王山であるのは間違いない。そのために臨時国会で指名を受けた新首相の「冒頭解散」が政界の多数説となっている。総裁選でお祭騒ぎを演出して人気を盛り上げ、新首相のご祝儀相場で高支持率が出ているうちに解散、そして総選挙を勝ち抜き、政権維持を図るという筋書きだ。いまの自民党にはこの手しかない。
 とはいえ、新総裁はそのまま首相となるから、ひとまず日本丸の船長の役割を担う。当然、その覚悟、経綸、力量、識見の用意が必要だ。さらに、長年の自民党政治の行き詰まりが現在の苦境の主因だから、新しい自民党政治の青写真も打ち出さなければならない。

 3年連続の総裁選という異常事態は、安倍、福田両首相の失敗の結果だから、両政権をきちんと総括し、失敗の再現にならない人物を担がなければ、同じ轍を踏む可能性がある。それだけではない。総選挙の結果、辛うじて政権に踏み止まったとして、参議院の野党支配という現状で、どうやって政権を運営していくのか。福田首相のように手詰まり、八方塞がりとならないためには、後継総裁には与野党の枠を乗り越えて新しい政権基盤を構築できるだけの柔軟な発想、政治リーダーとしての信頼性、それに知謀や機略も求められる。

 一方、もし敗れて野党転落となれば、自民党はわずか数ヵ月でもう一度、総裁を選び直すのか。そんなエネルギーはないだろう。おそらく総裁続投となる。であれば、野党転落のケースも想定して自民党再生のシナリオも必要となる。だが、これらの重要なポイントは素通りになりそうだ。

 お祭騒ぎではない真剣な総裁選に持ち込まなければ、小沢代表がからかった「総裁選ごっこ」に終わり、「明日なき自民党」に転落するだろう。
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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