栃木県警のスゴすぎる「押収品陳列」の真相 販促のプロが絶賛、そのテクを徹底解説

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まず、トライアングル(三角構成)では空間を三角形で構成するのが基本だ。中心線を基準として三角形を作り、立体感を売り場に演出する。たとえば、センターのゴールデン・ゾーン(一番目立つ位置)に、売れ筋や売りたい商品を少し高く並べて、左にその次の商品、右にその他の関連商材を置くといったやり方だ。視線の動きは、中心かつ高い位置にあるセンターが一番先に見られ、次に平行に左から右へと流れるという法則を利用している。

スポーツ選手が登る表彰台も1番高いセンターに1位の金メダリストが位置し、左に2位の銀メダル、右に3位の銅メダルの選手が並ぶが、同様の視覚効果を利用している。デパ地下の惣菜売り場でも、パレットにただ平坦に盛るのではなく、トライアングルの山盛りにすることでボリューム感を演出している。

今回の押収品陳列では、ボールの陳列にトライアングルの手法が使われている。最下段は10個×10個のボールが入る四角い枠を作り固定し、その上にピラミッド型に10段に並べ合計385個のボールからなる山を形成。ピラミッド型にすることで、そのまま積み上げるのに比べ、より少ないボールの数でボリューム感を出している。

国会議事堂と東京駅とピラミッドの共通点とは?

エジプトのギザのピラミッドとスフィンクス(写真:photo-imp / PIXTA)

2つめのテクニックがシンメトリー(左右対称)だ。真ん中の中心線を基準として、左右が対称となる均衡状態を作り出す。これにより安定感を演出できる。国会議事堂、東京駅やピラミッドが代表的なシンメトリーの建築デザインだ。

今回の場合、2つのピラミッドやそれらを囲む新球の箱・中央のバットは左右対称に並べられ、さらに細かい点をいうと、箱に入っている新球は、すべて縫い目をそろえて向いている。これは「フェイシング」という手法で、パッケージ正面を見せることを指す。

よくコンビニでは、リーチイン・クーラー(後方からドリンク類を品出し、陳列する冷蔵庫タイプ)で、棚の後ろ側から商品をレールに流して入れている。通常のコンビニでは単に流して並べるだけだが、売り上げが高いお店では前から商品の正面が見えるよう、位置を直している。商品の視認面積率が低いと、商品自体がないと判断されかねないからだ。しかも、球の入った箱自体に斜度を付け、見やすくする工夫までなされている。

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