海外マネーが地方の不動産に続々流入 福岡市などで取引活発

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人口増の魅力、マネーを引きつける

地方都市は東京と比べ、景気が低迷するとその回復が遅くなる傾向があり、潜在的な投資家の数の少なさ、物件の流動性の低さなどを理由に、投資妙味が低いとされる。

地方都市の中で、なぜ福岡市において外資系投資家のマネー流入が活発化しているのだろうか──。

その理由のひとつは、他の中核的な地方都市を上回る人口の増加だ。福岡市によると、2010年までの10年間で人口は9.2%増加。この間に札幌市は5.0%、仙台市は3.8%の増加率で、地方都市のなかで福岡は突出している。

九州経済調査協会の調査研究部次長、片山礼二郎氏は、投資家にとって安心材料の1つが「人口の伸び。これが福岡経済に寄与している」と話す。

また、不動産調査会社IPDジャパンによると、福岡のオフィスビルの投資家の期待利回り(キャップレート)は昨年以来、5.6%で推移。東京のキャップレートが2013年に入ってから4.4%に低下したのと比べると、福岡には割安感がある。

投資案件の枯渇も、高値に警戒感

ただ、福岡の不動産市場の規模が小ささが課題となっている。すでに投資物件の枯渇を指摘する市場関係者もいる。

福岡の不動産仲介会社、九州レップの白砂光規社長は、県外や海外投資家などから物件投資の問い合わせが増えているものの「福岡には(投資家の)お腹を満たすほどの物件はない。福岡にこれだけのお金が流れようとしているのは、日本に流れているお金が多過ぎるということだ」と語る。

実際、福岡の物件投資に対する警戒感も広がり始めた。三菱地所<8802.T>の運営する私募リートは、このほど博多祇園センタープレイス(福岡市博多区)を約100億円で取得。

この価格ではキャップレートが5.0%を割り込むとされ、玄海キャピタルマネジメント(本社福岡市)の資産運用部長、谷元勝美氏は「この案件は福岡での競争がいかに激化しているかを示している」と指摘する。

ゴールドマンのリートやメットライフアリコは築年数の浅い物件を長期保有し、そこから安定した賃料収入を狙ういわゆるコア投資家。福岡ではこのような投資家が高値で物件を取得するために、玄海キャピタルのように物件の転売でリターンを得ようとする投資家は、アセットタイプを変えて投資機会を探さざるを得なくなっているという。

谷元氏は「ゴールドマンや(メットライフ)アリコと価格を競っても勝てない。たとえ勝ったとしても(高値を払うことになるため)それは負ける投資になる」と話す。

福岡リート投資法人<8968.T>を運用する福岡リアルティの投資部長、神野英哉氏も、市内の物件価格の上昇で売買の価格が折り合わなくなっていると指摘する。福岡リートには250億円の借入余力があるものの、価格に見合ったリターンを出す物件を見つけられず今年3月以降、投資をしていない。

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