今年でもう3度目、東芝株主総会に漂う徒労感 メモリ売却などは波乱なく承認されたが・・・

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(注)「臨時」は臨時株主総会(出所)東芝発表資料

全体としては、株主に誠実に答えようという姿勢が見られるが、こと②と③に関してはどうしても噛み合ない。最後とする質問の後に議事延長の動議が出されたが、あっさり否決された。結局、2017年3月期の決算承認、取締役選任、東芝メモリの売却の3議案は何事もなかったかのように可決された。

「安心したとは到底いえない」

総会後にも株主に話を聞いた。東京都足立区在住の83歳の男性は「経営者も一生懸命だろうが、メモリ売却が来年3月末までに実現できるのか。安心したとは到底いえない」と不安感を口にする。

50代の東芝の元従業員という男性は「新しい話もないしこの程度だろう」と言えば、40代で三重県から来た男性は「上場廃止になっても持ち続ける。未来を見つめて復活して欲しい」と前向きだった。横浜から来たという68歳の男性は「アミカワ社長(正確には綱川社長)の人柄は信用できた」と語った。3時間近い総会を終え、足早に駅へと向かう株主には一様に疲労感が目立った。

株主総会を振り返って感じたのは出席株主の少なさだった。実際、出席株主は回を追うごとに減っている。不正会計発覚後の2015年からお弁当がなくなったこと、都内の両国国技館から千葉の幕張メッセに会場が移ったことなどが影響している可能性がある。

もっとも、株主総数がこの1年弱で約10万人減っていることを考えれば、東芝は個人投資家から見捨てられつつあるのかもしれない。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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