今年でもう3度目、東芝株主総会に漂う徒労感 メモリ売却などは波乱なく承認されたが・・・

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②について、S&W買収を決めた2015年10月のリスク認識については法務部担当で新任取締役候補でもある櫻井直哉上席常務が「(米国の4基について)コスト上昇が想定され、電力会社から訴訟を起されていた。工事担当の建設会社からも訴訟の恐れがあるなどの問題を抱えていた。S&W買収で電力会社から3000億円以上の契約の上積みをいただける。非効率だった工事業者を変えるなどの要素があった」と買収に至った事情を説明した。監査委員会委員長である佐藤良二社外取締役も「手続きは十分になされていた」と強調した。

総会は2時間52分に及んだ(撮影:梅谷秀司)

東芝の原子力部門の元社員という株主が「2011年9月には原子力事業の人間には原発の損失がだいたいわかっていた。損失を伏せていたのでは」と詰め寄ったが、原子力事業統括部長の畠澤守常務が「当時は911のテロ対応で(原子炉の)設計を大幅に見直して認可を得るタイミングであり、福島事故の直後でもある。設計や工事の変更でコスト増加が見込まれていたので、お客様と交渉していたタイミングだ」と対応は適切だったと訴えた。

十分な手続きでも見逃された巨額損失リスク

2011年段階でコスト増が見込まれていたならば、2012年3月期にWHののれんを減損すべきだったのでは、という疑問が浮かぶが、そこへの見解は得られなかった。

S&W買収についても、手続きが十分になされていたにもかかわらず、6000億円を越える損失リスクを見逃した理由を突き詰めようとしていない。理由がわからなければ、手続きを改善してもこの先また同じ失敗を繰り返す不安が消えない。

③は、2017年3月期決算についてPwCあらた監査法人が「限定付き適正」とした件。PwCあらたは当期に計上されているS&W買収関連損失6522億円のうちの相当程度ないしすべての金額は、S&Wを買収した2016年3月期に計上されるべきであり、同期を修正する必要があると主張している。

これに対して、東芝は2016年3月期の修正する理由はないという立場。「利用すべき情報の判断についての見解の相違」(平田専務)であり、佐藤監査委員長も「会計監査人(PwCあらた)の説明について十分に了承することができなかった」と説明した。真っ向から意見を否定されたPwCあらた監査法人から直接回答を求める動議も出されたが、書面回答を平田専務が読み上げただけで動議は否決された。

④については、経営幹部層への360度サーベイの実施、ミーティングや対話会の活発化のよるコミュニケーション強化に取り組んできており、「引き続き取り組みたい」(10月末に退任する人事・総務担当で経営刷新推進部長の牛尾文昭専務)とした。

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