排除発言ではなく「人間性」こそが問題だった 衆院選直後にバレる政治家の誠実さと人間性

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彼女が本当に安倍晋三政権を倒すつもりだったかどうかは疑問です。もしそうであれば立憲民主党には刺客を立て、自民党でもお友だちなら対抗馬を立てなかったことは、説明がつきません。

しかも刺客は政治の素人が多かったり、九州に住んでいる都民ファーストの会代表の父親を東京の選挙区に立たせるなど、候補者と選挙区の選定はばらばらで、「自分の人気に乗るのだから大丈夫、ともかく数をそろえろ」とも思える人選でした。

権力が欲しいだけの人に見えた

「排除」発言当時の、彼女の表情はどうだったでしょうか。永田町の数合わせ論理を使って狙う総理の座を目前にした女帝のような、傲慢で不敵な態度だったではありませんか。小池さんは日本をリセットしたかった以上に、権力が欲しいだけの人に見えました。

ちなみに「フェアウェーを目指す」までは、ゴルフを知らない私でも、前後の関係で理解できましたが、「AI(人工知能)からBI(ベーシックインカム)へ」など、今まで本人でさえ優先課題として向き合ってこなかった横文字が、選挙用政策もどきとして突如ポンポン出る彼女の演説に、違和感が大きかったのは私だけではなかったはずです。

「排除」発言は、彼女の失言だったのではなく、本音であったことがにじみ出ていました(写真:ロイター/Issei Kato)

全選挙民に訴えたかった彼女の思いとは、何だったのでしょうか。権力の座しか見ていなかった人だと言わざるをえません。繰り返しますが「排除」という強い調子を持つ言葉を使ったことは、失言などではなく、本音であったことがにじみ出ていました。

1970年代、何重もの裏切りと、7億~8億円ともいわれるカネが動いたといわれる角福戦争で敗れた故・福田赳夫元首相は「民の声は天の声というが、天の声にも変な声もたまにはあるなと思いますね。敗軍の将、兵を語らず」という名ぜりふを残しました。今回の選挙も、その変な天の声があちこちで聞こえました。

たとえば森友・加計問題では、安倍さんは「丁寧に説明しています」と言っていました。昭恵夫人の証人喚問をしないのは、自分が代弁しているからと強弁するなど、説明の中身はけっして丁寧といえるものではありません。安倍さんへの不支持率は支持率を超えているのに、この問題隠しのための解散だったと言う人も多かった選挙でした。そして、その選挙で自民党は圧勝しました。

この圧倒的勝利に、私は4月の国会答弁を思い出しました。この4月の国会で、当時の民進党の柚木道義議員が昭恵夫人の証人喚問を要請した時の安倍さんの答弁です。「内閣支持率は53%です。自民党と民進党の支持率はご承知のとおりですっ!」と、せせら笑うように突き放した、あの「答弁」です。数パーセントの支持率しかない野党の者など、質問する資格もないと言わんばかりの態度でした。

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