世界同時不況の震源・米国で増大する「土壇場企業」

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債務超過のGM、フォード 政府の低利融資にすがる

原油高と消費不況で一段と追い詰められているのが自動車ビッグスリーである。今年の米自動車販売台数はS&Pの予想で1420万台と昨年の1610万台から大幅続落。来年も1410万台に減るとみられている。小型・低燃費車に強い日本勢にシェアを侵食される状況も続く。

 GMの営業赤字は急増、6月末の債務超過は570億ドルに達した。CDSプレミアムは2000ベーシスポイントを突破している。フォードも6月末に17億ドルの債務超過に転落。投資ファンド・サーベラスの傘下に入ったクライスラーも、大型車依存が高いため今年の販売は20%以上も急減しており、資産売却を加速している。

GMと金融関係会社GMACの社債発行残高は30兆円以上あり、万一デフォルトとなれば、影響は計り知れない。CDSで信用リスクがどこに飛んでいるかもわからない。また、従業員や年金受給者などOBも軽く100万人を超えており、社会問題化は必至だろう。

かつて1970年代にクライスラーが危機に瀕した際は、社会問題化したために政策的に救済した経緯があるが、今やクライスラーだけではない。3社は今、米国政府に対して低燃費車の開発資金として500億ドルの低利融資を求めている。大統領選を控え国民の投票行動にも影響するだけに、政府の対応が注目される。日本の自動車メーカーへの風当たりが強まると見る向きもある。

原油高の影響をモロに受けるのは航空業界も一緒だ。今年春以降、フロンティア航空など格安航空会社の破産法申請が相次いだが、7月前半に原油価格が140ドル台をつけたときには、アメリカンやユナイテッド、デルタなど大手もみな破綻必至と株式市場でたたき売られた。最近の原油反落でやや小康を得たが、それでも株価は10ドル前後の低水準にある。

各社は便数削減や運賃値上げ、資産売却など赤字脱却、流動性維持に向け懸命に対策を講じている。とはいえ、再び原油が高騰すれば、対応にも限界があり、引き続き命運は原油価格に握られている。


(週刊東洋経済)

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