常磐線再開区間「乗れない切符」が買えるワケ 復旧部分にない「190円区間」が示す全通の日

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新築された富岡駅の駅舎。コンビニエンスストアを併設している(筆者撮影)

10月21日からは富岡―浪江間の列車代行バスも、以前の2往復から増発されて、下り6便、上り5便となっている(下り1本のみ原ノ町行き)。地域の中心地富岡、あるいは列車の運行区間が延びたことによるいわき市との交流増加を期待してのことだろう。少しずつでも「震災前のまま」を目指している姿勢がわかる。

駅舎が新築され、駅内にはコンビニ・イートインの店も入った富岡駅前では、午前中に記念式典など祝賀行事が行われていたが、私が注目したのは、線路・信号設備である。いわきから来た列車は、同駅でいちばん改札口から遠い3番線に入って折り返す。1・2番線は使用されていない。

震災前は1番線が原ノ町方面行き、2番線がいわき方面行きに主に使われており、3番線は1往復だけの折り返し列車用であった。2・3番線が1面のホームに接しており、改札口との間は新設のエレベーター付き跨線橋(こせんきょう)で結ばれている。

一見不便だが、その理由は…

観察してみると、信号設備が「3番線でのみ、いわき方面への折り返し運転が可能」となっていることに気付いた。これは震災前と同じである。原ノ町方面への列車運転が可能となった暁には、手戻りとなる再工事をせずに済むよう、最終的な形の設備をまとめて整えておき、それまでは一部の設備のみ使用する形だ。

富岡と同じく、駅舎からいちばん遠い線でしか折り返せない浪江では、跨線橋を使わず、仮設通路が設けられた(2017年4月1日・筆者撮影)

ところが、これまでは、たとえば竜田まで運転再開された際は、同じように改札口からもっとも遠い線路を使って折り返し運転をしていても、駅舎との間に段差のない仮設通路を、未使用の線路をまたいで設け、利用客の便を図っていたのだ。これはかつての広野でも、現在の浪江でも同様である。

しかし、エレベーター付きとはいえ跨線橋を渡らせるようにした、富岡駅の運転再開方法は違った。改札口に直結した1番線でのいわき方面への折り返しが元々できない駅ではあるが、仮設通路方式と比べれば不便なのは明白だ。

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