職場内の「不公平感」を放置するのは危険だ トラブル回避に有効な「私のトリセツ」

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事情がよくわからないままに「Aさんの仕事なんだけど代わりに頼む」と仕事を振られるのと、Aさんの置かれている状況を知ったうえでカバーするのとでは、納得感がまるで違います。

みんなが一斉に自分の事情を明らかにし、共有することで、「みんな大変なんだね」「お互いに助けあおう」という雰囲気も生まれました。

貢献を共有する

お互いに制約をカバーしあう、とはいっても、実際には制約のない人、制約の小さい人の仕事量と貢献度が大きくなることは避けられません。遅くまで仕事ができる一部の社員に仕事が集中すると当然ながら不満も出てきます。不公平感を評価で解決する方法は、評価の権限を持っていなければできない、と思われるかもしれません。しかし、たとえ権限がなくてもできることはあります。

たとえば、チームメンバーの仕事量、貢献度を数値化して共有するという方法です。

私の部門では、社員1人ひとりのイベント担当数や研修の満足度などを定例会議で共有していました。また、定例会議の報告フォーマットに「サンキュー欄」という項目を設けて「今週のPM研修ではAさんに受講促進を手伝っていただきました。ありがとうございます」など、その週に誰に助けられたかを記入するようにしたのです。こうすると、誰が頑張っているか、誰に助けられているかが可視化されます。貢献度が高い人は、チームの中でしかるべき評価を得ることができるわけです。

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自分の貢献をほかの人が知ってくれ、認めてくれているとわかっているだけでも、不公平感はかなり和らぎますが、四半期に1度は表彰などでより目に見える形にしてもよいでしょう。その場合も単に売り上げなどの結果指標だけで表彰者を決めるのではなく、業務の効率化など生産性の指標も加えると、制約のある人でも貢献意欲が高まります。

今後、どの職場でも制約を抱える社員は増えていきます。それぞれに事情がある以上、貢献度に差が出るのは仕方がありませんが、不公平感を取り除く必要があります。「私の取説」と貢献度の数値化・共有をうまく活用して、全員が自分なりのハイパフォーマンスを発揮できるチームをつくりましょう。それは、人手不足を言い訳にせず、全員が定時で帰れるチームをつくることにもつながるはずです。

清水 久三子 アンド・クリエイト代表取締役社長・人材育成コンサルタント

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しみず くみこ / Kumiko Shimizu

アンド・クリエイト代表取締役社長・人材育成コンサルタント
大手アパレル企業を経て1998年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現IBM)入社。企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして新規事業戦略立案・展開プロジェクトをリード。「人が変わらなければ変革は成し遂げられない」との思いから専門領域を人材育成分野に移し人事・人材育成の戦略策定・制度設計・導入支援などのプロジェクトをリード。コンサルティングサービス&SI事業の人材開発部門リーダーとして5000人のコンサルタント・SEを対象とした人材ビジョン策定、育成プログラム企画・開発・展開を担いベストプラクティスとして多くのメディアに取り上げられた

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