職場内の「不公平感」を放置するのは危険だ トラブル回避に有効な「私のトリセツ」

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こうした流れから、今後さまざまな制約条件を持つ人が働くことが普通になっていくわけですが、日本はこれまで単一民族、終身雇用と流動性の少ない社会でもあり、多様な人材が働くには環境も意識も準備万端とは到底言えない状況です。

私は長年外資系企業でコンサルタントとして働いてきましたが、2008年に育休を終えて復職したとき、私が任された人材開発部門はまさに多様性あふれる状況に置かれていました。

十数名のメンバーは全員、小さい子どもがいたり、メンタル疾患を抱えていたり、介護負担を抱えているなど、仕事をするうえでの制約がありました。長時間の残業をさせるなどもってのほかです。さらに言えばリーマンショックの余波を受け予算が減らされ、人員は以前の半分以下。

このチームを率いて、いかにハイパフォーマンスを達成し、部門として価値を出していくか。著書でも紹介している時短と効率化の技術の何割かは、このときの苦闘の中で身に付けたものです。

程度の差はあっても、現在はあらゆる職場で人手は不足しているでしょう。育児や介護、本人の健康状態といった事情を抱え、これまでどおりの働き方ができない制約社員もますます増えていくでしょう。だからといって、一部の制約のないメンバーが長時間労働を続けてチームを支える、というやり方は通用しません。故障者がいっそう増える悪循環に陥るだけです。

制約のある人も、そうでない人も、全員ができることで力を発揮してチームとして成果を出す。そのために、メンバーが働きやすい環境をつくらなくてはいけません。そしてそれは、長時間労働の問題を解決できる環境でもあるはずです。

では、さまざまな事情や能力を持つ多様性のある人たちと働くためにどんなことを考えたらよいのか。実際に私がやってみたことも含めてご紹介していきます。

意外と知らないダイバーシティの2類型

その前にそもそも多様性とは何かを考えてみましょう。今よく言われているダイバーシティ経営は女性活躍推進という意味で使われることが多いようですが、実は多様性には2種類があるということを理解しておく必要があります。

早稲田大学ビジネススクールの入山章栄先生によれば、「タスク型のダイバーシティ」と「デモグラフィー型のダイバーシティ」があるということがわかってきたそうです。

タスク型は、能力や経験や知見など、目に見えない価値が多様化すること。デモグラフィー型は、性別、国籍、年齢など目に見える属性が多様化すること。

一言でいってしまうと、「能力の多様性」と「事情の多様性」ということになるでしょう。

経営学の研究によれば、タスク型ダイバーシティを持つ組織はそれが成果にプラスに働きますが、デモグラフィー型ダイバーシティはマイナスの効果をもたらす可能性が高いということがわかってきました。

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