吉野家社長「現時点で牛丼値上げ計画はない」 牛丼依存からの脱却に向け、鶏肉商品投入も

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河村泰貴社長は前社長の安部修仁氏と同じく、アルバイトから社長になった(撮影:梅谷秀司)

──吉野家では今年度から新商品の投入サイクルを半年から45日程度に早めた。

1つひとつの商品はそれなりにいいものができたという自負はある。ただ、短い期間に商品を集中して投入したことで商品の訴求が十分にできなかった反省がある。たとえば、7月前半にはサラシア牛丼、ベジ牛定食、沖縄タコライスという新商品を立て続けに投入し、後半には土用の丑の日や、麦とろ牛皿御膳の発売が控えているという状況だった。

割引キャンペーンにしても、2~3年前と比べて効果が弱くなっている。客数が増えるのはそのときだけで、なかなか持続しない。そこで9~10月に、吉野家とはなまるうどんで初めてのコラボ企画を実施した。

具体的には「はしご定期券」というものを300円で発売した。これを使えば、吉野家では丼や定食などが80円引きになる一方で、はなまるうどんではうどん1杯ごとに天ぷら1品が無料になる。グループ間の相互集客を図り、客数の増加につなげていきたい。

配送なら牛丼並盛570円でも売れる

吉野家の一部店舗では、デリバリーを実施している(記者撮影)

──6月から一部店舗で出前館と組んで牛丼のデリバリーを開始した。

本当に急いでいる人はわざわざ外食に行かない。自分たちのほうからお客様に近づいていく必要がある。デリバリーでは、牛丼並盛価格が570円(実店舗は380円)だが、お客様の反応は悪くない。

同業他社もデリバリーに参入する中、吉野家の牛丼を配達してもらえるという価値が200円近くはあるということがわかった。配達可能な店舗を1店でも多くしていきたい。

――中期経営計画は2年目に入ったが、進捗はどうか。

数字については満足していないが、今期は増収増益の計画だ。昨年からの中計3年間を中長期的な成長のためのファーストステージと位置づけている。「力強い量的な成長にはコミットできません。その代わり、未来に向けた種をまいていろいろと模索していく3年間にさせてください」ということが計画の骨子だ。そういう意味ではお約束どおりという実感だ。

手応えを感じているのは、新型店舗だ。従来の吉野家は、少しでも早く商品を提供するため、従業員がU字型カウンターの中を走り回っていた。ただ、従業員の高齢化などもあり、このスタイルはいつまでも持続可能なものではない。

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