フランスの「加工写真」告知義務は、是か非か 「若い女の子のため」というが…

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スッピン丸出しなんて、きょうび中学生だってやっておりません。そんな法律なんかないニッポンは大丈夫でしょうけど、かわいそうなフランス人。

まぁ、一般庶民はそこまで気にしなくていいみたいです。対象は、有名人やモデルなどに限られているとのこと。そうは言っても、こうした法律が世界の先陣を切って、こともあろうにフランスでつくられるなんて。美の殿堂ですよ、フランスは。フェイクニュースが駆け巡る現代社会、ホントに本当の真実なのでありましょうか。

若い女の子たちの深刻な健康被害

この法律は実は子どもたちの成長にとって若干、いや大きな問題を提起していることが特徴です。

まず、法律の正確な内容です。「コマーシャル用写真に撮影されたモデルがデジタル編集によってやせているように加工されていたり、あるいは体の一部が大きく見えるように加工されている場合は“Photographie retouchée(画像は編集されています)”というクレジットを表示しなければならないこと。この規定に反した場合は約500万円(約3万7500ユーロ)もしくは広告制作費の30%が罰則金となる」のです。

写真をデジタル編集する代表的アプリ「フォトショップ」で編集加工することを“フォトショップする”と動詞化するほど、写真の加工は当たり前となっています。法律が指定しているのはフォトショップされたCM 写真であって、モデルの髪の色・鼻の形・肌のしみを消すなどは対象外となっています。

法律を所管するのは保健省です。やせているモデルの女性を、フォトショップしてさらにやせさせ、通常ではありえないプロポーションに加工してCM に使うことがファッション業界を風靡していることと、その影響を受けた若い女の子たちが理想体形を誤解して深刻な健康被害が発生していることが、法律成立の背景なのだそうです。保健相のマリソル・トゥーレーヌのコメントは、「若い子どもたちに非現実的な体形の画像を見せて、これが規範だと思わせることは、自分自身の価値を低く思わせてしまい、自信の喪失につながり、健康的な習慣に悪影響を与える可能性があるので、法律は子どもたちの健全なセルフイメージと健康的な習慣にとって重要なのだ」と説明します。

これを受けて、写真提供サービス企業は次々に、モデルの体形が実際よりもやせて見えたり、大きく見えるようにレタッチされた写真を使わないことを発表しています。これからはリアルな体形をモデルたちに反映させるという動きは、フランスにとどまらず世界的に広がっていくだろうとメディアは伝えています。

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