「学資保険」を信奉する人が気づかない切り口 「お得かどうか?」の問いが実はナンセンスだ

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学資保険は「貯金+生命保険より学資保険のほうがお得」と説明を受けている相談者が来店することもあるが、何とも危なっかしい説明だと言わざるをえない。

まず、比較の仕方が間違っているケースも散見される。たとえば300万円分の学資保険に子供が生まれてすぐ加入した場合、300万円を18年間保証する生命保険と同じかというと、実態は大きく異なる。なぜなら100万円払い込んだあとに契約者である親が死亡した場合、受け取ることができる300万円のうち、100万円は払ったおカネが戻って来ているだけだからだ。純粋な意味での保険金は200万円にすぎない。

したがって、比較をするには保険金が一定の定期保険ではなく、保険金が徐々に減る収入保障保険で比較する必要がある。保険料は収入保障保険の方が半分以下となる。わざとなのか知識不足なのかわからないが、学資保険のほうが得と見える説明になっている。

また、すでに説明したように、貯蓄型の保険は元本保証ではないため、貯金と同質であるかのような説明は実態としても法的な面でも極めて不適切だ。

たまに摘発された投資詐欺で「元本保証で利回り6%!」などとうたわれているものがある。銀行等でない企業が元本保証と説明している時点で出資法違反になる。

学資保険に限らず、貯蓄型の保険と銀行預金の安易な比較は出資法の観点からもグレーであるといえる。相談者から学資保険や終身の保険を続けるべきか辞めるべきかアドバイスを求められた場合、自分は「保険会社が破綻しないかぎり」と必ず枕詞を入れて説明している。保険とペイオフで保証される預貯金ではまったく性質が異なるからだ(預金保険機構により、銀行預金は1000万円とその利息まで補償されるが、保険は生命保険契約者保護機構で補償されるものの範囲は限定的)。

学資保険よりお得な運用方法は「繰り上げ返済」

学資保険が不利かのような説明に終始してしまったが、それでも学資保険がお得なケースはある。(1)(2)(3)で説明したリスクが発生しなかった場合、つまり保険会社が破綻せず、金利も上がらず、手元資金に余裕があり、なおかつ数万円分とはいえ生命保険として効果も見込めるケースだ。確率としては決して低くはないだろう。

筆者が相談者に対して「無理に辞めなくてもいいですよ」とアドバイスする理由もこの辺りにあるのだが、ではケース・バイ・ケースで話は終わってしまうのかというと、そんなこともない。

もし学資保険に加入を検討している人が住宅ローンも抱えているのであれば、繰り上げ返済に充てたほうがお得と説明するだろう。

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