志のあるおカネで、ニッポンを元気にしたい セゾン投信中野氏×ミュージックセキュリティーズ小松氏

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小松 2011年11月より、金融庁によって、金融検査マニュアルが明確になり、一定の条件を満たせば、当社のファンドも資本と見なせるようになりました。その結果、融資が増えたという実例も、少しずつ出てきています。

本気のビジネスでなければ、ファンドも成功しない

中野 まさに、これこそがリスクマネーの社会的役割と言えるでしょう。リスクマネーが入ることによって、初めて銀行融資などさまざまな形でおカネが出てくる。まさに拡大再生産のベースとなるおカネです。でも、事業に対する志や、経営のロジックがしっかりできているかどうかなど、投資先の選定はかなり厳密に審査していらっしゃいますよね。

小松 ビジネスにしても音楽にしても、本気で取り組んでいるものでなければ、ファンドも成功しません。以前、ファンドを通じて支援したミュージシャンは、今度、日本武道館でコンサートを開くまでになりました。彼の音楽はとてもメッセージ性が強く、本気で取り組んでいるのがわかります。だからファンもつく。ビジネスも同じで、本気で取り組んでいる経営者はカッコいいものです。

だから投資家もついてくる。それを、おカネを出して下さる個人の方々に対して、きちっと開示していく必要があります。ちなみに財務の精査は5人の公認会計士とともに行っています。大事なことは、ファンドが償還されるまでの間、しっかりと事業が存続できるかどうかということ。その地域に根差した企業に投資する場合は、役場の方や地元の方から、その企業がどれだけ支持されているのかということも、しっかりとリサーチします。

中野 最後に、これからのビジネス展開を、どう考えていますか。

小松 地域金融機関や自治体との連携を強めていきます。すでに大阪キュリティーズという子会社を通じて大阪府から事業委託を受けています。大阪の人を採用し、府内の雇用確保につなげるとともに、地元企業にとっては新しい資金調達手段ができたことになります。しかも府民は、ファンドを通じて地元企業に投資することができます。ほかの自治体からも、同じようなスキームでファンドを立ち上げたいという声もいただいております。

中野 銀行預金などと違って、おカネの使い道が明確にわかるという点がいいですね。銀行は、言うなれば無意識のおカネを集め、それを融資していますが、ミュージックセキュリティーズも、わたしたちセゾン投信も、規模こそ小さいけれども、思いのあるおカネを集め、意思のある方向に動かそうとしています。それに加えて投資をする人たちからすれば、経済的成果以上のものを得るきっかけにもなります。それこそが金融仲介業の最大の役割であり、そのビジネスに携わる者の喜びにもつながりますね。

(撮影:尾形 文繁)

東洋経済オンライン編集部

ベテランから若手まで個性的な部員がそろう編集部。編集作業が中心だが、もちろん取材もこなします(画像はイメージです)

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