21歳地下アイドルが悟った仕事観と対人関係 「自分とは合わない人」を断って見えてきた

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それでいいと思っていたのに、なんだかそれは、ずっと自分にうそをつき続けているような感覚でした。

だから、どれだけ応援されても、私ではない女の子が応援されているように感じていたのです。当然、本気で応援してくれているファンの人たちにも本当の自分を隠しているような後ろめたさがありました。

そうやって、活動を始めて3年が経つ頃には、ファンを無意味に消費しているような感覚にも、自分を消費することにも慣れてしまい、そのためにすっかり疲弊していました。

自分もファンの人も、不本意に消費されない世界で生きていきたい――。

絶対にそれはできるはずなのに、それ以前に自分に何ができるのかわからなくて、私の精神は病んでいきました。

私の心と体は、限界に達していました。

結局、私は地下アイドルの非日常感に目が眩んでいたのだと思います。

非日常感に目が眩んでいたのかもしれない(筆者撮影)

私は昔から自分の存在を肯定できていなかったので、いつか機会があったら、違う人間になるのが自然と思っていました。だからどうせなら、この世界でまったく違う自分になったほうがよいと思っていたのです。

しかし、なんでもない女子高生だった私が、アイドルの何たるかを知りもしないのに、当てずっぽうで演じてきた地下アイドル像なんてなんの意味もないものでした。

他者の期待に応えるのは、自分の居場所を手っ取り早く確保するには確実な方法です。しかし、その行動が自分の本意でなければ、ファンからの独善的な要望に沿うことで、無理をして相手をつなぎとめている地下アイドルの女の子と同じになってしまいます。

自分の本意でない形で他者の期待に応えても、自分にとって居心地のよい場所は確保できないのです。

私生活の自分の周りには、自分と合う人しかいないのに、どうして地下アイドルの私には、合わない人も集まってきてしまうのだろう――。

さらに自分に合わない人たちが集まってくると、本当は一緒にいてほしい人たちが逆に、居心地が悪くなって、離れていくようだったのです。

こうして、地下アイドルの自分にも、その人間関係にも疲弊して、地下アイドルの世界から一度は身を引きました。

自分らしさとは何か

しかし、数カ月後に再びこの世界に戻ってきた私は、今度こそ自分と、自分がいる世界を冷静にとらえ直す必要があることに気づきました――。

まず私は、地下アイドルが自分の趣味嗜好や想いを殺す仕事であるという認識を修正することから始めてみました。

次ページ私は、私としてしか生きられなかった
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