21歳地下アイドルが悟った仕事観と対人関係

「自分とは合わない人」を断って見えてきた

私は店長として女の子たちの支えになりたいのに、女の子たちにとって社長にひいきされている私は脅威でしかありませんでした。近づいたら社長から意味もなく怒鳴られるかもしれないのです。

女の子たちもみんなつらいのに、私も孤立してしまって身動きが取れなくなり、私は心身ともに完全に疲弊しきっていました。

そんなある日、いまこうして振り返っていても、どうしてもきっかけが思い出せないのですが、私はついに社長と店で衝突して、お客さんも女の子たちもいる前で我を失ってしまいました。

次に記憶があるのは、エレベーターホールで叫びながら倒れ込んで、男性スタッフに取り押さえられていたことです。

堪え性がない品位に欠ける行為だったと思います。しかし意識を失うということは、本能的にその場にある人間関係をすべて断ち切りたかったのだろうと、何年も経ったいまになって思います。

私の断り切れない性格は、こうして最悪の状態で発露してしまったのです。

そういったふうに、対人関係も何かとバランスの難しい地下アイドルの世界ですが、当時の私がつらかった原因は自分の中にもありました。

「自分が何になりたいのかわからない」

私の場合、有名になりたいとか、将来的に地上のアイドルになりたいといった明確な目標を持たないまま地下アイドルになってしまったため、「自分が何になりたいのかわからない」ことにもやもやと悩んでいたのです。

それでも私は、アイドルに対してこだわりがなかったので、ファンの期待に応えられればいいやと思っていました。しかし、その考えは次第に「地下アイドルでいることは自分の趣味嗜好や想いを殺すこと」という思い込みに変わっていったのです。

結局、ファンの期待に応えるといっても、何をどうしたらいいかわからないので、周囲の地下アイドルと同じようなコスプレっぽい衣装を着て、さして興味のない流行りのアニメソングを歌っていました。

当然、そんなことをしていても、自分が何になりたいのかわかるはずもありません。それでも投票制ライブの日はやってきて、私はほかの地下アイドルの子たちと競わなければなりませんでした。そしてそのたびに、自分には何ができるのか、どれくらいの価値があるのか、悩むようになっていったのです。

端からよっぽど信念のある子は別ですが、自分にいつまでも自信を持てない子は、人気がある子のまねをすることで、どんどん自分を見失っていきました。

反対に自信がありすぎる子は、ほかの子が自分よりも票を集めると、出演を辞めてしまうほどショックを受けていました。そのまま引退していった子たちもたくさんいます。

地下アイドルになったことで、一度はアイデンティティを取り戻したはずの女の子たちが、再び喪失感に襲われる瞬間を何度も目にしました。

私も誰かと比べられるよりずっと、自分で自分をわからないことのほうがつらかった。

でも私は、自分の意思を尊重することをやめて、ファンが好みそうなことを勝手に想像して、主体性がないまま活動を続けていたのです。

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