神鋼社長、改ざんで時価総額4割消滅の「弁明」 看板の線材製品にも拡大、出荷先は約500社

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――出荷先は500社だが、海外の自動車メーカーも含まれているのか。

勝川氏:具体的な取引先を公表するのは差し控えたい。ユーザーには連絡し、安全性に関して打ち合わせをし、今後の協力内容などを聞いている。要求されたデータや素材メーカーとしての見解などを伝えている段階だ。

――今回の事件で神戸製鋼の信頼は失墜した。また、(リコールなどの)費用負担に応じるとなると、神戸製鋼は今後も存続できるのか。

川崎氏:今後、ユーザーからどういう指示や指摘が上がってくるかはわからないが、現状認識としては、(今回の不正品が売上高に占める割合は)4%だが、残り96%はどうなっているのかという話になると思う。アルミ・銅事業については、各製品の品質データと仕様書との整合を終えた。そしてデータが合致している案件では、ダブルチェックを行うなどトップレベルで品質の確認をし出荷している。

(出荷しているとはいえ)神戸製鋼は信頼できるからというのではなく、「条件」付きだと認識している。その「条件」を今後取ってもらえるのか。これは、1カ月以内にまとめる調査での原因究明や今後の対策の確立にかかっている。

「BtoBビジネス」であることに原因

――現場レベルで納期へのプレッシャーや作り直しなどで発生するコスト増などが不正につながった可能性はないか。

川崎氏:ないとは言えないが、上から指示はしていない。顧客のニーズに対する生産工程やその余力、また品質保証に関するデータの自動化などがどうだったのか。そういうことの検証を鋭意やっていく。

――今回で時価総額が約4割減った。これを理解しているか。

川崎氏:理解している。原因の分析と対策を進めたい。

――「安全性に問題がない」という根拠は?

勝川氏:安全性については、われわれで評価できない。以前発表した案件については、供給したユーザーから確認している。他の案件では現在調査中だが、これまでのところ安全性に対する話は来ていないという意味だ。

――今回の一連の不正は、本体の各部門やグループ会社など広範囲に及んでいる。現時点では何が問題と思うか。

川崎氏:神戸製鋼のビジネスは、たとえば鉄鋼事業やアルミ・銅事業はBtoBであり、半製品を供給するビジネスだ。一方で機械はBtoCビジネスで、最終製品をつくるメーカーに納めている。今回の問題はそのBtoBビジネス、直接消費者に関係のない製品に集中している。ここに原因の本質があると思う。

――不正を誘発する企業文化や組織体制があるのではないか。

川崎氏:外部から見ると風土的なものを感じるかもしれないが、1カ月以内の調査報告で、徹底的な原因分析をどうとらえるかだと理解している。

中村 稔 東洋経済 編集委員
福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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