USJ再生の森岡氏が新会社「刀」を作った理由 日本を代表するマーケッターが動いた

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そもそも、私のやりたいことは、自分の力で自分のマーケティングを成功させることではありません。自分の持っているスキルやノウハウのみならず、優秀な人々の能力も引き出して企業再生に結び付け、結果を出せるかに重きを置きます。だったら、最初から「チームでやったほうがいい」ということになったのです。小船で大海に漕ぎ出したようなものですが、専門能力に秀でた能力を持つ人たちが集まってくれてすばらしいチームができて、本当にわくわくしています。

「ドリームチーム」で日本を再生するという「使命」

森岡 毅(もりおか つよし)/1972年10月12日生まれ。兵庫県出身。神戸大学経営学部卒業。1996年P&G入社。日本ヴィダルサスーンのブランドマネジャー、米シンシナティにあるP&G世界本社で北米パンティーンのブランドマネジャー、ウエラジャパンの副代表などを歴任後、2010年にユー・エス・ジェイ(USJ)入社。革新的なアイデアとマーケティング理論を組み合わせ、USJをV字回復させる。同社のチーフ・マーケティング・オフィサー、執行役員、マーケティング本部長を歴任後、2017年1月退任。同年、刀を設立、代表取締役CEOに就任。著書に『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』(角川文庫)、『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』(KADOKAWA)、『確率思考の戦略論』(共著、角川書店)など(撮影:今井康一)

この「ドリームチーム」である株式会社「刀(かたな)」が取り組むことは、日本が100年後も豊かであるためにも、マーケティングの力で日本企業の再生を成し遂げることです。

USJは純粋な日本企業でないかもしれませんが、私がUSJでまさに実証したように、マーケティングには、消費者の購買行動を決定的に変える力があります。1つの企業がよみがえる過程で新しいアイデアが生まれ、新しい産業を生み出す力まであるのです。

たとえばエンターテイメント産業をとってみても、日本企業は世界に誇れるクリエーターが生み出すコンテンツや製品を持っているのに、それを商業ベースで売ることがあまりに下手です。それゆえ、ビジネスのシーズ(種)やユニットだけの提供に終わり、損をしているケースが山ほどあります。ゲームソフト会社のキャラクターとハリウッドの関係が代表的ですが、これは「ハリウッドが強欲で悪い」、という話ではありません。日本企業自身のマーケティングの努力と覚悟が足りないからこうした事態を招いているのです。

しかも、日本企業が置かれた現状は、ますます厳しいものになっています。量的拡大で成長できた時代は終わり、国内は人口減という構造変化が起きる一方で、グローバル企業同士の戦争が本格的に始まり、いまやグローバル企業は本来ローカル企業が得意とする分野まで侵攻を始めています。

質的に成長しないと淘汰される新しい時代が到来しており、その推進力こそがマーケティングの力です。これがあるかないかが、国際競争力に勝てるかの「要のスキル」なのです。幸い、私たちは正しいマーケティングをすれば日本で産業化が無理と見られていたエンターテイメント業界でさえ立派なビジネス案件として成立することを、USJでなんとか証明できました。マーケティングの力が足りず、危機感を感じている日本企業から声がかかれば、ぜひそのお手伝いをしたいと考えています。

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