加入しやすい「認知症治療保険」は買いなのか 70歳以上の人たちに人気となっているが…

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保障対象としては、パンフレットの表紙には「認知症」「7大生活習慣病」「白内障」「熱中症」「骨折」など、と記載されています。「ご契約例」にある給付金の額は、表のようになっています。

認知症治療給付金 300万円
入院一時金 5万円
手術給付金(入院中) 10万円
手術給付金(外来) 5万円
放射線治療給付金 10万円
骨折治療給付金 10万円

*契約後1年間の給付額は半額(骨折は病気を原因とする場合のみ半額)

「白内障」「熱中症」「骨折」の保障については、特筆すべき点はないように思います。保障額が小さいからです。入院保障は一時金で5万円、手術にしても、入院中の場合10万円、外来では5万円です。骨折治療給付金の10万円も含め、「わざわざ保険に加入して準備すべき金額だろうか」という素朴な疑問がぬぐえません。

役に立つ機会が多いように思える仕掛け

「入院や手術の保障があります」という案内ではなく、白内障・熱中症・骨折といった具体例が挙げられているので、「保険が役に立つ機会が多いだろう」と感じる向きもあるかもしれませんが、頻発しそうな事態に、特に手厚く備えられるわけではないのです。

放射線治療に関する給付は1回につき10万円とはいえ、治療が長引く場合など、高額になる可能性もありそうです。それでも筆者は、給付総額は多くても100万円くらいではないかと見ています。

8月にライフネット生命が発売した「がん保険 ダブルエール」の保険料設定が根拠です。診断給付金100万円のプランに、抗がん剤や放射線治療を受けた月に10万円の治療サポート給付金が支払われる保障を付加すると、保険料が約2倍になっていることから、10万円の給付は10回分、診断給付金プラス100万円程度を見込んでいるのだろうと推察しているのです。

「ダブルエール」の治療サポート給付金は、治療を受けた月ごとに10万円支払われます。これに対し、『ひまわり認知症治療保険』の放射線治療給付金支払いは、60日に1回を限度としています。

インターネットや保険ショップで販売され、現役世代の加入が多い「ダブルエール」と、70歳以上の加入者が過半数を占める「ひまわり認知症治療保険」では、体への負担などを想像すると、後者の給付回数が多くなるとは考えにくいでしょう。したがって、数百万円もの給付が行われるケースは珍しいのではないでしょうか。

そんなわけで、保険ならではのまとまった額の給付が行われるのは、やはり「認知症治療給付金」の300万円だと思います。

厚生労働省が2015年1月に公表した「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)」には、「我が国における認知症の人の数は2012年で約462万人、65歳以上高齢者の約7人に1人と推計されている」という記述があります。

さらに、「この数は高齢化の進展に伴いさらに増加が見込まれており、今般、現在利用可能なデータに基づき新たな推計を行ったところ、2025年には認知症の人は約700万人前後になり、65歳以上高齢者に対する割合は、現状の約7人に1人から約5人に1人に上昇する見込みとの結果が明らかとなった」とも書かれています。

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