「ヘイト投稿」がネットで容認される不可思議 ソーシャルメディアはどう対応するべきか

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先般ロンドンで1週間にわたって開催された、グーグルのスタッフと行政や市民との非公開セッションにおいて、グーグルはこうした懸念は認識しており、しかるべき対策を進めていると告げた。

このセッションにおいて筆者は、英国の反過激派擁護団体、フェイス・マターズの代表者であるフィヤズ・ムガール氏が、グーグルにとって「最終的に大事なのはカネ」であり、「この問題に取り組んでいない」と主張していると伝えたが、これは事実ではないという確証をグーグル側からは得た。言論の自由を絶対としてきた、このコミュニケーション巨大企業の対応は、因果関係をより精緻に検査し、懸念を表明する理性的な方法を検証する方向に変わっているようである。

バランスを取るのは難しい

言論の自由と安全保障の両方をうまくバランスをとることは、現在民主主義が直面している最も大きな倫理的・実用的問題となっている。これは、ハイテク企業にとっても同じだ。

また、ムガール氏が言うように企業が最も重視するのは利益だとしても(そうではない企業などあるのだろうか)、改善の呼びかけに応じない場合、多額の罰金を科せられる可能性があるということは、変革へのインセンティブにならないだろうか。

もっとも、この安全保障と自由、利益と規則のバランスを複雑にとっている過程は、第2次世界大戦後、民主主義が守ってきた言論の自由やニュースメディアに大きな打撃を与える危険性もある。

リベラル派は今後、ヘイトスピーチや好戦的なメッセージを警戒している人たちと、新たな措置によってこうしたスピーチをやめさせようとしている人たちという2つのグループを見極めていくという難しい仕事が待っている。複雑なことに、これらの2つのグループは、時に一体となることもあるのだ。

著者のジョン・ロイド氏は、オックスフォード大学のロイタージャーナリズム研究所の共同創設者。このコラムは同氏個人の見解に基づいている。
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